タイの大洪水

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先月後半に、日本企業にかかわりの深いアユタヤの大工業団地が水没して一躍耳目を集めたタイの洪水が、その後も一向に収まる気配を見せず、11月に入って、首都バンコクをも呑み込みそうな勢いだという。何故こんなにも長い期間にわたり、深刻な被害が続くのか、部外者にはわかりづらいところがある。

洪水は、チャオプラヤー沿いに発生しており、その流域に位置するアユタヤやバンコクが深刻な被害に見舞われている形だ。

今回の洪水は、7月末にベトナム北部に上陸した台風ノックテンが、未曽有の雨をふらせたことに端を発したという。大量の雨がチャオプラヤー川上流一帯に降ったが、それらはすぐさま排水されずに長期間にわたって滞留し、少しずつ川沿いに海へと下っていくのだが、その速度が非常に遅い。支流から本流に集まった大量の水がゆっくりと流れながら、流域を呑み込んでいくというメカニズムが働いた。

このメカニズムの背景には、いくつかの要因が働いている。

まず、チャオプラヤー川の自然的な特性だ。日本の川と違って、この川は勾配が非常に緩い。最上流から最下流までわずか20メートルほどの高度差しかないというから、河の流れは非常に遅く、遠目には流れていないようにも見える。それが、洪水が長引いていることの最大の要因だ。

次に、チャオプラヤー川流域の開発が進んでいることも、大きな要因として挙げられている。これまでなら、大量の水を吸収してきた土壌の能力が、開発の進展によって弱まっているというのだ。

以上は自然的な側面だが、人為的な要因も見逃せない。政治がうまく機能していないという、現在のタイが抱えている要因だ。

現在のタイの政権はタクシン派のインラック女史が率いているが、その政権基盤は非常に不安定だ。そのため、国難ともいえる事態に挙国一致で対応することができていない。それが、洪水がなかなか制御できないことの大きな要因として働いている。

政治家の足の引っ張り合いで、震災復興がなかなか進まない日本の現状と重ね合わせると、政治の責任とは何かについて、深く考えさせられるところだ。(写真は洪水に飲まれたバンコク市街地、ロイター)





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このページは、が2011年11月 4日 19:06に書いたブログ記事です。

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