野田首相の影が薄い、いったい何を考え、何をやろうとしているのか、さっぱりわからない。こんな印象が国民の間に広がっているのではないか。というのも、野田さんは10月には一度も国内での記者会見を開かなかったように、国民向けにほとんど何もしゃべることがないからだ。一方で、消費増税やTPP参加といった国論を二分する重要課題については、なし崩し的に進めようとしている。
先日はそんな野田さんをとらえて、公明党の代表質問者が、「あなたは物言わぬ総理ですね。あなた自身の政治信念を表明すべきです」と迫った。野田さんは「誠心誠意の四文字」というのみで、まともに答えることはなかった。
野田さんは、果たして「物言わぬ総理」なのか、「物言えぬ総理」なのか。
「物言わぬ」ということならば物を言える能力は有るのだが、都合があって言わないだけだということだろう。その「だんまり」の影に何があるか、それはあんたたちの勝手な想像力に任せるということになる。だが「物言えぬ」つまり「ものが言えない」ということならば、政治家として無能だということを意味する。
野田さんを選んだのは民主党の党内事情であって、国民が直接選んだわけではない。また民主党が野田さんの政治理念を掲げて選挙を戦い、それを国民が支持したわけでもない。野田さんは、一国の総理大臣としては、正統性の根拠が薄弱だと指摘されても仕方のないところがある。だからこそ、自らの政治信念を積極的に国民に向けて発信し、直接国民の支持を獲得する、こうした姿勢が誰よりも求められる。
それなのに、である。野田さんは国民に向かってほとんど何も言おうとしない。
ところが海外に出かけると、結構いろんなことをしゃべる。先日はオバマ大統領と会って、沖縄の基地の移転については、現地の強い反対があることをわかっていながら、速やかにこれを解決すると約束した。
つい最近フランスのカンヌで行われたG20の席上では、直近の時期に消費増税を実施すると国際公約をした。
また原発については、日本の高度の技術を生かして積極的に輸出するといい、TPPについては参加するつもりだというメッセージを発信している。
どれも国論を二分する大問題だ。エイヤと決められる性質のことではない。にもかかわらず、野田さんはそれをいとも簡単に、しかも国内ではなく海外で発信している。これではやり方が逆ではないか。
こうした不満がジャーナリストを中心に高まってくるのは理由のあることだ。(写真はEPAから)
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