二人のマリオはユーロ危機を救えるか

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いま、ユーロ危機のさなかに登場した二人のマリオに注目と期待が集まっている。イタリアの首相に就任したばかりのマリオ・モンティとヨーロッパ中央銀行(ECB)総裁マリオ・ドラギだ。二人合わせてスーパーマリオ・ブラザースと呼ばれている。期待の大きさがうかがえるというものだ。

モンティの方には、イタリアの救世主として、危機的な財政状態を立て直し、ユーロ圏の一員として責任あるパフォーマンスを振る舞えるように、イタリアを、ひいてはEU全体を正常化するために、有効な政策をとるよう期待されている。

だがその期待が俄に現実化するかといえば、そうは簡単ではない。モンティが国民を説得して財政健全化に成功したとしても、その効果が表れるには長い時間的なスパンを必要とするだろう。だがいまのユーロ危機にはそれを待っているだけの時間の余裕はない。ことは急を要するのだ。

一方ドラギの方には短期的で即効的な政策的効果が期待されている。いまユーロ圏が陥っている目前の危機を救うためには、ECBが直接介入に乗り出し、イタリアやスペインの国債を買い支えるしかない。場合によっては、貨幣を鋳造してでも買い支えることが求められる。そうすれば、デフォールトに関する市場の不安感は当面払しょくされ、ユーロが破たんする可能性も遠のく。いまこそECBの出番なのだと、声高に主張する経済専門家もいる。

だがこうした意見に対しては、ドラギは懐疑的だ。ECBにはそもそもそこまでは期待されていない。ECBの役割はユーロ圏内の金融秩序を円滑に保つことであって、構成各国の財政政策の破たんを繕うことではない、というのがその主な理由だ。

ドラギはむしろ、ドイツやフランスなどの比較的安定した国々が積極的に乗り出して、リスクを引き受けることが先だという意見だ。いまのようにユーロ全体の金融秩序と、各国の財政とがばらばらになっているような状況では、当面打てる手立てとして考えられるのは、持てる国が持たざる国を補完することでしかない。

なぜなら、もしユーロの危機が顕在化して、破たんするようなことが起きた場合、持てる国も相当の損害を被ることになるからだ。泥船が沈んでしまえば、船頭もろともに沈んでしまう、というわけである。だからそうならない先に、持てる国はもっと積極的に負担を背負う必要がある、これがドラギの考えだ。

要するに、口先で債務国の無責任ぶりを非難するばかりで、自分からは何の行動も起こそうとしないメルケルやサルコジに対して、ドラギは痛烈な批判をしているようなのだ。(写真はモンティ(左)とドラギのスーマーマリオたち:ロイターから)

(参考)Can the Super Marios save the euro? By Michael Schuman TIME





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このページは、が2011年12月 1日 20:04に書いたブログ記事です。

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