「農民の結婚式」と呼ばれるこの絵は、次の「農民の踊り」とともに、ブリューゲルが「農民画家」というレッテルを張られるきっかけを作った画だ。ブリューゲル自身は農民の出身ではなく、洗練されたインテリであったらしいが、こうした絵を見る限り、いかにも骨太で、土の匂いを感じさせる雰囲気に満ちている。
画面やや右手に、黒っぽい幕を背にして座っているのが花嫁だと解釈されている。彼女は落ち着いて威厳がある。彼女から右に三人目の男は修道士で、恐らくこの結婚式を祝福するために招かれたのだろう。修道士が話しかけている立派な身なりの男は、この村の地主だと解釈されている。
肝心の花婿がどこにいるのか、はっきりしたことはわからない。ある説によれば、画面中央にやや後ろ向きに座り、右手にビールのジョッキを握っているのがそうではないかという。彼はなぜか、花嫁に話しかけるのではなく、あらぬ方向に目をやっている。
テーブルには大勢の客が座り、楽師の奏でる音楽はそっちのけで、暴飲暴食に耽っている。婚姻の当事者も、招かれた客も、結婚式をだしにして大いに楽しんでいる模様だ。
(1568年、板に油彩、114×164cm、ウィーン美術館)
コメントする