インドを訪問した野田さんがまず案内されたのがガンジー記念館、そこにはガンジーの政治理念を記した碑があったが、それに書かれていたのは七つの大罪、その大罪の筆頭には「理念なき政治」とあったそうだ。
これを目にした野田さんがどんなふうに感じたか、国民には伝わってこない。伝わってきたのは、飛行機のタラップから降りたときに帽子を贈られたということと、その帽子に頭が入りきれなかったのは、知恵がつまっているからだといったらしいことだ。
野田政権に、知恵ならぬ政治理念が欠けていることは、もはや国民の誰にもあきらかなことだ。党内のごたごたが絶えないのも、政治理念があいまいなことの結果だ。確固たる理念を共有できないものが、どうして政治を運営していくうえでパートナーとなれるだろうか。
普天間基地をめぐる政権の迷走ぶりは理念なき政治の最たるものだろう。防衛省は基地整備の前提となる当該予定地の環境影響評価書を、姑息な手段で沖縄県庁にもっていかせたが、これなどは普通の人々の抱いている常識に真っ向から反する出来事だ。話し合いをしようと云っておきながら、その話し合いの舞台を自分からメチャクチャにしているとしか言いようがない。
この騒ぎには、野田さんも無関係ではないという。運送会社に持っていかせろといったのは、ほかならぬ野田さんだという報道もある。運送会社が地元の人々に妨げられて届けられないとなると、今度は夜明け前に防衛相職員の手で無理やり運び込ませた。これは、一川防衛大臣の独断らしい。
一川大臣は、どういう意図からこんなことをしたのかと、プレスに聞かれて、日本は法治国家なのだから、法で定められた手続きを粛々と進めるのは当たり前じゃないかと答えた。自分の都合しか目に入らない偏狭さというべきだろう。
一川大臣は先日、参議院で問責決議を受けたばかりだ。沖縄の人々の気持ちを踏みにじったというのが主な理由だ。今回は、それに重ねて、沖縄の人々を愚弄するようなことをした、そういわれても仕方があるまい。
一川大臣とそのボスである野田さんが拙速に走ったのは、アメリカ側の意向に気兼ねしたからだ。野田さんみずから年内には環境影響評価書を提出しますとオバマさんに約束した手前、何があっても、どんな手段を用いても、評価書ばかりは沖縄県庁に受け取らせたい、そんな魂胆ばかりが見えてくる。
そこには理念などというものはかけらもないといわねばない。目先の都合に振り回されて、明日のことを見据えていない。
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