ラブロフは何をしに日本にやってきたか

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昨日(1月28日)、来日したロシアのラブロフ外相と日本の玄葉外相が会談を行った。この会談に向けて玄葉外相は事前に北方諸島を視察し、ロシア側に領土返還に向けて協議の再開を呼びかける意向だと表明していた。一方、ロシア側は、今回の外相の日本訪問は日露間の経済協力について話し合うことが主な目的だ、と国内向けのメッセージを出していた。

NHKの報道によれば、「玄葉外務大臣は、北方領土問題について<日本とロシアの立場は大きく異なるが、真の友好関係を構築するためには解決し、平和条約を締結することが、これまで以上に必要だ>と述べました。これに対し、ラブロフ外相も<立場は違うが、落ち着いた雰囲気の中で、感情的にならず、お互いに受け入れ可能な解決方法を模索していきたい。挑発的な発言は避けるよう努力したい>と述べ、相互信頼の雰囲気が高まっていることを踏まえ、問題を棚上げせずに、静かな環境の下で議論を進めていくことで一致しました。」とある。

これを読むと、ロシアも日本の主張には理解を示しており、将来に向けて北方4島の問題について日ロ間の協議を進めるのにやぶさかでないといったニュアンスに聞こえる。しかしそれはどうも深読みのようだ。

ラブロフ自身、この問題は今年の大統領選挙が終わるまでは何のコメントもできないといっているように、少なくとも今の自分には、この問題を取り扱う権限もないし、そのつもりもないという態度をとっている。そんな相手にいくら話しかけても馬の耳に念仏と云ったところだろう。

実際、第三者たるアメリカの新聞「ワシントンポスト」などは、経済協力や安全保障の問題が話し合われた一方で、懸案の領土問題では何らの成果もなかった、と伝えている。それが常識的な受け取り方と云ったものだろう。

経済協力は、ロシアが日本との間で最も望んでいることだ。シベリアの石油開発をはじめ、北方諸島への投資についても、ジャパン・マネーに大いに期待しているようだ。できれば領土問題を棚上げしたまま、日本からの投資を促進したい、そんな思惑がありありだ。

玄葉外相はそんなロシアの望みに応えて、日本企業関係者のロシア訪問を容易にすると約束する一方、北方領土への投資の可能性についても否定しなかった。

何のことはない、この会談はロシア側の宿年の希望に応える一方で、北方領土をめぐる問題については、あいかわらず棚上げしようということに終わった、そう見るほかはない。ラブロフのしたたかさだけが印象に残った。(写真はAPから)





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このページは、が2012年1月29日 19:42に書いたブログ記事です。

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