魚の町を守る:気仙沼信用金庫の200日を追う

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NHKの特別報道番組「シリーズ東日本大震災"魚の町"は守れるか~ある信用金庫の200日」を見て、考えさせられた。地域経済の復興に取り組む気仙沼信用金庫の活動を描いたものだが、そこには経済にかんする金融機関の原点ともいえる姿があぶりだされていたからだ。

震災復興にとってもっとも肝心なのは資金の確保だ、資金が揃わなくては、施設や設備の復元もままならないし、従業員の給料など運転資金も確保できない。罹災した企業にとって、いかに資金を確保するかが、復興できるかどうかの分岐点になる。

その資金を提供すべき立場の金融機関が、姿勢を問われている。全国展開の都市銀行は、すでに貸し出している資金が不良債権化するのを恐れるのが関の山で、新規融資には中々応じない。そこで期待されるのが地域に密着する信用金庫だ。

番組が追いかけていた気仙沼信用金庫は、既に50億円をこえる融資が不良債権化している実情にかかわらず、なおかつ意欲ある企業に、リスクを覚悟で融資しようとする立場をとってきた。地域経済が沈没してしまっては、信用金庫自体の存立基盤が消えてしまうとの危機感からだ。

しかし信用金庫のような小規模の金融機関には体力の壁がある。そこで国の復興補助金などを最大限に活用しながら、企業の当座の資金需要に応えながら、復興を応援していこうというスタンスをとっている。

国の復興補助金は、基本的には、資金の受け手が復興計画を作り、その計画を実現したことに対して、後払いで資金を供するという方法を取っている。国の補助金制度の一般的な枠組みが、ここでも適用されているわけだ。しかし復興しようとする企業には、そもそも当座の投資資金や運転資金を確保できないところがほとんどだ。そこで信用金庫がそのつなぎ資金を用立てることによって、企業の復興を助けよう、そうした方法をとるようになる。

こうしたつなぎ資金といえども、リスクを無視して貸すわけにはいかない。そこで信用保証協会によるリスクヘッジをしたうえで貸し出しを行うわけだが、その場合には、すでに借りている他の銀行との関係が問われる。他の銀行との関係が整理できないと、二重ローンが不良債権化するとの判断が働くためだ。

番組が取り上げていた例では、国の補助金適用が決まった企業について、気仙沼信用金庫が、信用保証協会によるリスクヘッジをしたうえで、必要な運転資金を貸し出そうとする場面があった。この企業が国の補助金を受けられるようになったについては、信用金庫の担当者の努力があった。ところがこの企業が国の補助金を貰えると知った元々のメインバンクが、横槍を入れてきた。

国の補助金を貰えるなら、強力な担保にもなるし、従来通り自分のところがメインバンクとして必要な資金を貸してやろう、それがいやで、信用金庫の資金を借りるというなら、自分のところで貸した金は返してもらいたい、金は信用金庫に用意させたらいい、といってきたわけだ。

こういわれると、信用金庫の方では非常に苦しくなる。担当者は歯ぎしりして悔しがり、都市銀行の横暴さを非難していたが、都市銀行にとっては、そんなものは犬の遠吠えに過ぎない。

このケースでは、最後に都市銀行が譲ったために、一件落着するに至ったが、これに類した話はいくらでもあるのだろう。

この番組をみて筆者が感じたのは、震災復興の意欲を持った人に、現在の復興のためのシステムが十分にマッチしていないということだ。補助金と云っても、それを活用できるのは、当面の資金繰りに不自由をしない人たちだけだ。自分でつなぎ資金を用意できず、金融機関からも借りることのできない人たちには、ハードルは余りにも高すぎる。そう感じた次第だ。





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このページは、が2012年2月12日 19:02に書いたブログ記事です。

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