戦争をテーマに命をかけてきた女性ジャーナリストのマリー・コルヴィン(Marie Colvin)と、駆け出しの戦争ジャーナリスト、レミ・オシュリク(Rémi Ochlik)が、昨日(2月22日)、シリアのホムズで、政府軍側の攻撃によって殺害された。
二人は各国から集まった戦争ジャーナリストが根拠を置く施設にいたところを、政府軍の爆撃に見舞われ、死亡したものだ。
マリー・コルヴィン(55歳)は、イギリスで最も有名な戦争ジャーナリストだ。バルカン戦争やチェチェン戦争を報道して名をあげた。2001年にはスリランカでの紛争を取材中に、政府軍の攻撃が原因で左目を失った。それでもひるむことなく、眼帯をかけながら世界中の戦争地域をかけまわった。そのイメージが、彼女を戦争報道の女神的な存在に持ち上げたわけだ。
今回も死を覚悟しながらシリアの戦争の実態に迫ろうとした。先週は友人のカメラマン、ポール・コンロイとアメリカ人の女性ジャーナリストが政府軍の攻撃で重傷を負ったばかりだ。アサド政権は、シリアの実情が世界に報道されるのをきらって、彼らを攻撃しているともいわれている。しかしコルヴィンは、ひるまず現地にとどまり続け、命を失ったわけである。
オシュリク(29歳)は、チュニジア、リビア、エジプトのアラブの春を映像に取り続けてきた。キュニジアでは同僚カメラマンのルカ・デルゴが取材中に死亡した。それでも彼はひるむことなく戦場をかけ歩いた。コルヴィンと同じだ。
コルヴィンは死ぬ直前までFacebook を通じて情報を発信し続けていたようだ。それがいきなりとまってしまったので、心配した人々が、安否を確認するメッセージを寄せた。しかし彼女はついにそれらの声にこたえることはできなかった。
彼女は2010年に行われたある催しの席上、命をかけてまでやろうとしているのは、どんな動機からなのか、職業的な野心なのか、それともヒューマニズムからなのか、質問されたことがあった。その時には明確には答えられなかったらしいが、彼女自身は常に目前の危機を冷静に分析しながら、最善の選択をできるように努めてきたということだ。場合によっては退却もある、場合によっては命をかけて踏みとどまることもあると。(写真はマリー・コルヴィン:TIMEから)
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