経済犯罪への死刑判決:呉英(Wu Ying)さんのケース

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中国では汚職や横領、麻薬取引などの経済犯罪に対しては厳罰をもって臨んでおり、死刑判決も珍しくはない。そうした犯罪は共産党の官僚や大金持ちによってなされるケースが殆どなので、一般の民衆が死刑判決を受けた人間に同情することは全くないといってよい。ところが最近、経済犯罪をもとに死刑判決を受けたある女性について、ネット世論が強烈な同情を示しているらしい。

その女性とは今年31歳になる呉英(Wu Ying)さん。2009年に、違法な行為によって資産形成を行ったとして、死刑判決を受けた。その違法な行為とは何をさすのか、いまひとつわからないところが多いのだが、どうも闇金融ということらしい。

中国では資金を銀行から借り入れできるのは国営企業や民間の大企業だけで、普通の経営者は、民間金融業者から資金調達するほかない。そうした資金のやり取りをする市場には、胡散臭いものも多いというのが実態らしい。

呉英(Wu Ying)さんは、20代の前半にヘアサロンの経営に成功してから、さまざまな商売に手をだし、25歳の若さで中国有数の金持ちにのし上がった。その成功を支えたのは、中小企業を相手にした貸金業だったといわれる。瞬く間に大金持ちになったことを見れば、呉英さんが汚いビジネスで金を稼いだとする訴追者の主張にも、一理ないわけでもないらしい。

それなのに、呉英さんがネット社会で同情を集めるに至った原因は何なのだろう。彼女を貶めようとしているものたちに、それをさせるやましい理由があるのではないか、そんな憶測が中国のネット社会に広がったのだ。

彼女は取り調べの過程で、自分がかかわったビジネス・パートナーの名をいくつか出した。それには共産党の幹部やら経済界の実力者の名も含まれていた。そうした連中も、司直による追及はまぬかれない。汚職役人にとっては非常に都合の悪いことだ。

そこでネット世論では、呉英さんの口からもっと多くの名前が出てくるのを心配した連中が、彼女を消そうと思って、裁判所に働きかけたのではないかとの憶測が流れるようになったのだと思われる。この憶測は、いまでは中国のネット世論にとっては真実として語られるまでなっているらしい。

中国でも、死刑判決が下されたような重い事案については、最高裁判所による見直しが制度化されている。ネット世論では、最高裁判所がこの事案を慎重に検討し、彼女が冤罪で刑死することのないよう、訴えているものが多いということだ。(写真は呉英さん:DailyMotion の映像から)





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