プーチンが北方領土問題に言及

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昨日(3月2日)の朝日新聞夕刊に、プーチンが北方領土問題の解決に強い意志を示したという旨の記事が出てオヤと思った。プーチンの発言は3月1日に行われた記者会見の席上だったという。3月4日には大統領選がある。プーチンはその選挙に勝つことを当然の前提として、自分が大統領になったら、北方領土問題を、日露両国相互が受け入れられる内容で決着させ、日露関係の強化を図っていきたい、そう語ったというのだ。日ロ間に領土問題は存在しない、といっていたメドヴェージェフとは大きく異なるものだ。

今日の朝日の朝刊では、記者会見の背景なども詳しく書かれていた。記者会見は、日本の朝日新聞のほか、欧米の有力紙数社の編集デスクを集めて行ったもので、日露間の問題だけが話題になったわけではなく、現在の世界情勢と関連させつつ、それらにプーチンがどう対応するつもりなのか、おもに西側の記者の質問に答えるようなやり取りがあったらしい。

その中で、朝日新聞の記者が、まずは3.11にたいするロシア側の援助に対して感謝の辞を述べたうえで、「プーチン氏が2月27日に発表した東アジアにかかわる外交演説の中ではもっぱら中国のことがふれられ、日本のことは全くでてこなかった、日本のことはお忘れか」と水を向けたところ、プーチンのほうから、北方領土問題に触れてきたというのである。

やり取りを読んだ限りでは、これまでプーチン自身がとってきたスタンスをあまり超えているという印象はない。プーチン自身のスタンスとは、1956年の日ソ共同宣言を基本にするというもので、あくまで歯舞、色丹の2島返還が原則だ。日本が4島に固執するのは、1956年の外交交渉の努力を軽視するものだとする立場である。

それでは日本は納得できませんよ、と朝日の記者がいうと、プーチンは不快な顔を見せずに、交渉の余地を認めたという。そこから朝日の記者は、場合によっては、2島プラスアルファもありうると強い期待を表明していたが、はたしてそううまくいくか。

いずれにしても、これまでは領土問題そのものが存在しないというスタンスを取ってきたわけだから、その存在を改めて確認し、交渉再開に前向きな姿勢を、大統領になるはずのプーチンみずから示してきたことは画期的といえる。日本側としても、これに応じない理由はあるまい。

プーチンが初めて大統領になったすぐあと、日露間で領土問題交渉が進み、2001年には、歯舞、色丹の先行返還を前提にして、国後、択捉の返還についても並行して協議しようという方向で調整が進んだ。その時には日本側が国論をまとめきれず、交渉は中途半端なまま終わった経緯がある。

ロシア側には、日本側のそうした態度が不誠実として受け止められているフシもある。折角向うのほうからボールを投げてきたわけだから、日本側も腰を据えて交渉にあたっていく必要があろう。一部の論者には軽々しく話にのらないほうが良いなどと言っている者もあるようだが、そんなことでは進む話も進まない。





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