ブルームバーグのテレビ討論会で、エコノミストのポール・クルーグマンと共和党の議員でかつ大統領補選のランナーだったロン・ポールが、アメリカの金融政策のあり方を巡って、すさまじい論戦をしたそうだ。ふたりとも名前にポールがついているので、この論争は、ポール対ポール論争と呼ばれた。
クルーグマンは、ニュー・ケインジアンとしての立場から、金融面では低金利によって投資を活発化させ、財政面では政府支出によって景気を刺激すべきだという立場をとっている。一方のロン・ポールは、独特の経済理論を信奉していて、財政面での政府の役割には否定的であり、金融政策についても、FRBによるコントロールには否定的だ。できれば、FRBを廃止して、金本位制に戻るのがベターだと信じている。
まず、論争の口火を切ったのはクルーグマンの方だった。かれは、ロン・ポールの金本位制論を取り上げて、それは時計の針を150年前に戻すことだと批判した。
するとロン・ポールもすかさず反論し、クルーグマンの主張は、我々を1000年以上前の世界にもどすことを意味していると罵った。つまり、いまだ金本位制が確立しておらず、通貨がたえず信任を失っていた時代に、我々を戻そうとするのは許せんというわけである。
まあ、ふたりの日頃の主義主張を知っている者にとっては、このやり取りは当然予想されたことだ。その当然起きるであろう論争、というか口争いを、ブルームバーグが仕込んだことの背景には、何があるのか。
ロン・ポールのほうは、いまや実質的に大統領補選から脱落している。だから彼の発言はもはやあまり関心を呼ばない。一方クルーグマンの方は、ニューヨーク・タイムズのコラムをはじめ、色々な場を通じて、ケインジアン・モデルの復権を訴え、新古典派の復活を図ろうとする連中に鉄槌を下さんとの意欲旺盛である。
でも、いまのロン・ポール相手に、経済理論をまくしたてても、あまり意味があるとはいえないね、というのが筆者の率直な感想である。(写真は左がロン・ポール、右がポール・クルーグマン:APから)
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