中国の陳情者たち

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盲目の人権活動家陳光誠氏の米大使館亡命事件をめぐって中国における人権の状況が改めて世界中の関心を呼んだところだが、それと関連して、中国には人権を侵害された人々がその回復を願って、皇帝に直接陳情するという一種の政治文化があったということを、最近のNewsweekの記事が紹介していた。Waiting for Justice in Beijing : Photographs and Text by Sim Chi Yin

北京オリンピックが開催されるまでは、北京南駅一帯には、全国から出てきた陳情者がかなり大規模なテント村を作っていたという。彼らは、自分の住んでいる土地で、地方官憲によって様々な人権侵害を蒙り、その解決を求めて北京の中央政府要人に直接陳情しようとする人々だ。

陳情の内容は、正当な補償なく土地を取り上げられた、働いた対価としての賃金を払ってもらえなかったといった経済的な事案から、官憲による暴力的な弾圧など多岐にわたる。こうした陳情が中央政府に取り上げられるケースは非常に少ないのだが、それでもゼロではない。中には言い分を政府の役人に取り上げてもらって、地元の官憲を動かした例もある。それ故、人々は一抹の期待をかけて、北京に集まってくるというわけなのだ。

しかし、2010年の北京オリンピック開催を前にして、テント村は強制排除され、陳情者が住みつかぬよう、官憲の取り締まりが厳しくなった。

それでも、陳情者はあきらめずに集まってくる。彼らは、官憲の目を避けて路上生活をし、中央政府の役人に直接陳情できるチャンスを伺っている。それには、中国社会に深く根付いた陳情の文化が作用しているのだろう。かつてテレビ放映されたドラマ「大地の子」の中でも、日本人の息子の幸福を願って、中国人の父親が北京まで陳情にやってくるシーンがあった。それもやはり、中国人の伝統的な陳情文化を反映した行動だったのだ、と改めて納得した次第だ。(写真は、陳情の機会を伺って路上生活をするウィグル人女性)





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