ギリシャはどこへ行くのか:連立協議不調と再選挙

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先日の総選挙結果を踏まえて、ギリシャでは上位三党を軸とした連立協議がうまくいかず、パプリアス大統領が調整に乗りだしたが、それも失敗、結局6月半ばに再選挙ということになった。再選挙になれば、緊縮財政に反対して今回第二党に躍進した急進左派連合が更に票を伸ばすことが予想され、ギリシャのユーロ離脱が一層現実味を増すこととなる。

パプリアス大統領が切り札として出したのが、実務者による内閣だ。ギリシャは今現在も政治家を除外した実務者内閣が国を仕切っているので、要するに現状維持を提案したわけだ。だが、それでは政治家が何のためにあるのかわからない、折角の総選挙も無意味になる、と各党が反発、あくまでも政治家主導の内閣作りにこだわったということらしい。

確かに、今の首相はギリシャ中央銀行総裁だったルカス・パパデモス氏、彼のもとに官僚や実務家たちによる内閣が形成されている。日本で言えば、自民党や民主党による政治が破たんした結果、白川日銀総裁が担ぎ出され、彼のもとで学者や実務家による内閣が構成されるようなものだ。これでは日本の政党関係者も納得できまい。

ギリシャの政治がこんなにグシャグシャになってしまった原因は、言うまでもなく財政破たんと、それによる信用不安だ。パパンドレウの時期にこの問題をクリアできなかったために、ギリシャは事実上、EU、IMF、ECBの所謂トロイカによって監視されるようになってしまった。ギリシャは、自前で国債が発行できなくなってしまったので、これらの機関に借金しながらなんとかかんとかやっているというのが今の実態だ。

トロイカは金を貸してやる代わりに、きつい条件を課してくる。つまり一層の支出削減と増税だ。これが国民生活を更に厳しいものにする。今やギリシャ人の4人に一人は失業者だというが、もともとギリシャには公務員の割合が多く、それらが緊縮財政によって職を失ったために、失業者が増えたという構図なのだ。

ギリシャは他の国に比べて公有の割合が多く、したがって政府所有の財産も多い。それらの殆ども売りに出されている始末だ。たとえば、インフラでは、アテネ国際空港、ギリシャ高速道路、複数の港湾や地域空港、公営企業では、ギリシャ郵政公社、カジノ、公営競馬公社、宝くじ、サッカーくじなどといった具合だ。(有田哲文氏「ギリシャ、どこで間違ったか」)

再選挙での躍進が予想される急進左派連合のツィプラス党首は、一方では緊縮財政の緩和を言いながら、他方ではユーロには踏みとどまりたいといっている。しかし、そんな虫のいい話が通るはずもない。

政治家たちによる新たな政権ができたにしても、それが緊縮財政を放棄するようなら、ユーロからの離脱が現実味を帯びるだろう。ギリシャのユーロからの離脱は、ギリシャそのものに大打撃を与えることは無論、他のEU諸国にとっても打撃となるだろう。(写真は連立協議に臨む各党代表とパプリアス大統領:ロイターから)


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