この絵は、正しき魂たちが地上の天国から天上の天国へと昇天していく場面である。ボウツは地上の天国の空の一角にぽっかりと空いた穴に向かって魂たちが吸い込まれていく様を描いたが、ボスの場合には、ここにあるように、トンネルのような暗い空間を通して、トンネルの先に開いた光に満ちた空間を目指して、魂たちが移動している。
ここでも魂は人間の生き姿をしており、一人一人に天子がエスコート役を務めて付き添っている。彼らはふわふわと空中に浮かび、重力の法則から解放されて、上へ上へと登っていく。その先のトンネルの入り口からは、明るい光がさしている。
トンネルの形状は何気なく見えるが、人によってはこれに黄道十二宮を重ね合わせたり、運命の占いをみたりと、様々な解釈をするものがいる。
(パネルに油彩、87×40cm、ヴェネチア、ドゥカーレ宮殿)
関連サイト:壺齋散人の美術批評
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