絞首刑は残虐か?

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絞首刑は残虐なのか?もしそうなら、死刑の執行方法を見直す必要があるのか? この微妙な問題について、法務省内で検討が始まったそうだ。きっかけは裁判員裁判の導入、普通の市民が容疑者に死刑判断を下す際に、絞首刑が残虐な方法だという意識があると、適正な判断ができない場合がある。それ故、死刑の執行方法について議論を深めることで、国民の理解を得るようにしたいということらしい。

昨年(2011)10月に大阪地裁で下された放火殺人事件の裁判員裁判でも、絞首刑が憲法で禁じられた「残虐な刑罰」にあたるかどうかが正面から議論された。その結果、「ある程度のむごたらしさはさけがたい」として、合憲の判断が出たが、「前近代的な側面があり、最善かどうかは議論がある」とも言及されていた。

むごたらしさを感じさせるものとしては、「落下の衝撃で首がちぎれる」とか、「すぐに死ねずに苦痛が長引く」などといった意見がある。いずれも、吊るし方を間違えると起きうることだが、吊るし方さえ科学的に適正になされれば、こうした事態は起こらないはずだ。

筆者はかつて、イラクのフセイン大統領の側近が絞首刑にされた際、彼の首がちぎれたという事態を受けて、ニューヨーク・タイムスが乗せた記事をこのブログでも紹介したことがある。それは吊るし方にもテクニックがあるという内容だった。

そのテクニックとは、アイゼンハワーがまだ軍人だった時にまとめたもので、ロープの長さとか、落下の距離とかについて、詳細に記したものだ。それによれば、普通の体型の人間の場合、その身長とほぼ同じ長さを落下させたうえで首を絞めれば、苦痛を感じず速やかに絶命する。無論首がちぎれるなどということもない。首がちぎれるのは、過大な力が加わった結果であって、それは落下の距離が長すぎたことから起こる。そんなことが書いてあった。

ところが、朝日新聞が8月12日付紙面で、絞首刑を目撃したという人の話を紹介しているところによれば、「ギュー、バタンという大音響とともに、刑場の踏板が開き、カーテンが開けられると、首にロープがかかった状態の死刑囚がゆらゆらと揺れていた・・・死刑囚の両足は痙攣して宙を蹴っていた」などという記述がある。これは吊るされたあとでも、しばらくは死にきれなくて、両足を痙攣させながら苦しんでいたということを意味する。

この記述から、どんな風に吊るされたのかを明瞭に読み取ることは困難だ。この人は踏板が開いた後、ほぼ自分の身長と同じ距離を落下したのかどうか、そこがポイントだが、この記述からはわからない。もしも、相当の距離を落下したにもかかわらずすぐに死にきれなかったのであれば、アイゼンハワーのマニュアルが不十分だということになる。

刑の執行方法等についても、もっと詳細な情報を公開して欲しいものだ。

(参考)吊るしのテクニック:残虐な絞首刑?





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このページは、が2012年8月13日 19:04に書いたブログ記事です。

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