万葉集を読む


万葉集巻二「挽歌」の部には、柿本人麻呂の挽歌数編が収められている。そのうち、皇族の死を悼んで作られたものが四篇あるが、それらは、宮廷歌人としての人麻呂が、宮廷儀礼のために、命じられて作ったものと思われる。人麻呂のほかの挽歌に比べると、格調が高く、荘重な雰囲気に満ちている。

柿本人麻呂は、いうまでもなく万葉の時代を代表する歌人であり、日本の文学史を画する偉大な詩人である。人麻呂によって、歌の様式としての長歌が完成したことはさておき、人麻呂は、相聞的叙景歌というものに磨きをかけることによって、和歌というものの表現の可能性を最大限に引き出した。このことによって、和歌は我が国の言葉の芸術の、核ともなり心ともなった。

若い頃から折に触れて読み親しんできた万葉集。様々な注釈書の世話になったが、筆者が最も参考にしたのは、齋藤茂吉と北山茂夫だった。茂吉には鑑賞のコツのようなものを学んだ。北山茂夫は本業が歴史学者だけあって、万葉人の群像を古代史の文脈の中でとらえており、個々の歌を歴史的な背景に関連付けながら読み直している。そこが得がたい魅力にうつった。

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