英詩のリズム


ウィリアム・B・イェイツの詩「クレージージェーン裁きの日を語る」Crazy Jane On The Day Of Judgment(壺齋散人訳)

  愛はすべてさ
  からだも心も
  なにもかも愛するんでなければ
  満足できない
  こんな風にジェーンはいった

ウィリアム・B・イェイツの詩集「音楽のために」から「お叱りを受けるクレージージェーン」Crazy Jane Reproved(壺齋散人訳)

  船乗りたちが何を言おうと
  雷の降らす恐ろしい石にせよ
  空を掻き曇らす嵐にせよ
  天があくびをしただけのこと
  エウロペーが恋人と思って
  雄牛を抱いたのはご愛嬌
  どれもこれも つまらんことさ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「音楽のために」から「クレージー・ジェーンと司教」Crazy Jane And The Bishop(壺齋散人訳)

  樫の枯木のところに連れてってよ
  真夜中の時報を合図に
  (墓の中なら安全だから)
  あいつの頭に呪いの言葉をかけてやるんだ
  死んだいとしいジャックのために
  あいつはジャックを罵ったんだ
  堅物の司教が伊達男を

ウィリアム・B・イェイツの詩集「螺旋階段」から「後悔」Remorse for Intemperate Speech(壺齋散人訳)

  悪党やばか者を罵るときは
  ついつい激し過ぎてしまうので
  普段はまともに話そうとするが
  それでもなお変えられないのは
  狂熱的な気性のため

ウィリアム・B・イェイツの詩集「螺旋階段」 The Winding Stair から「死」Death(壺齋散人訳)

  死にゆく動物は
  恐怖も希望も持たぬ
  人間は死を前にして
  なお恐怖し希望する
  人間は幾たびも死に
  幾たびも生まれ変わるのだ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「塔」から「男の生涯11 コロノスのオイディプスより」From 'Oedipus at Colonus(壺齋散人)

  神の与え賜うた寿命に甘んじ それ以上を求めるな
  若い頃の喜びにこだわるのは止めよ 旅に疲れた老人よ
  ほかに求めるものがなくなれば ひとは死を求めるようできているのだ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「塔」から「男の生涯Ⅵ 追憶」His Memories(壺齋散人訳)

  わたしらは人目に触れてはならぬ
  秘められた標本のようであらねばならぬ
  サンザシのように身を折り曲げ
  冷たい北風に吹かれながら
  埋葬されたヘクトルのことや
  誰も知らないことを考えていよう

ウィリアム・B・イェイツの詩集「塔」から「男の生涯Ⅰ・初恋」First Love(壺齋散人訳)

  残忍な月の女神のように
  冷酷に育てあげられはしたが
  頬を赤らめて歩く姿が
  健康な乙女のように見えたので
  わたしは彼女の体が
  血と肉で出来ていると思ったのだが

イェイツの詩集「塔」から「路傍の道化」The Fool By The RoadSide(壺齋散人訳)

  あらゆることが揺篭から
  墓場へと向かって進んでいくのに
  逆に墓場から揺篭へと逆回りしたら
  道化が繰りなす糸巻車も
  もとの方向へと逆転し
  糸はもつれてしまうだろう

ウィリアム・B・イェイツの詩集「塔」から「レダと白鳥」Leda and the Swan(壺齋散人訳)

  一陣の風とともに巨大な白鳥が
  よろめく少女に飛び掛ると 水かきで
  少女のふとともを愛撫し くちばしでうなじをくわえ
  力ない少女の胸をその胸に抱いた

ウィリアム・B・イェイツの詩集「塔」から「ビザンティウムへの船出」Sailing to Byzantium(壺齋散人訳)

  ここは老人の住める国ではない
  若者たちは手をつなぎあい 
  命はかなき鳥たちも木の枝で歌を歌う
  滝には鮭が飛びつき 海は鯖であふれ
  魚も獣も鳥類も一夏じゅう
  命の営みを謳歌する
  官能の音楽に心を奪われ
  不老の知恵を省みるものはいない

ウィリアム・B・イェイツの詩「再生」The Second Coming(壺齋散人訳)

  らせん状に旋回して飛んでいく鷹に
  鷹匠の声が届かないように
  世界は秩序を喪失して
  混沌たる状態に陥っている
  いたるところどす黒い波が押し寄せ
  ささやかな生活まで飲み込んでしまう
  不安ばかりがつのるばかり
  未来への希望は失われた

ウィリアム・B・イェイツの詩集「クール湖の白鳥」からThe Wild Swans at Coole(壺齋散人訳)

  木々は秋の色に染まり
  森の小道は心地よく
  十月の黄昏の中で
  水面が静かな空を映し出す
  岩に縁取られた湖には
  59羽の白鳥がいた

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「偉大な過去」Mongan thinks of his past Greatness(壺齋散人訳)

  俺は若さの泉からビールを汲み取って飲んだのに
  いまじゃすべてを思い知らされて泣くだけなんだ
  俺は一本のハシバミの木でしかなく
  いつの間にか枝の間にパイロットスターや
  壊れた鋤が引っ掛けられていたってことを

イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「天上のクロース」Aedh wishes for the Cloths of Heaven(壺齋散人訳)

  金色や銀色の光で刺繍した
  天上のクロースをもっていたら
  青いのや灰色や黒っぽいクロース
  夜、昼、夜明けの色のクロース
  それらを君の足元に敷いてあげたい
  でも貧乏なぼくがもってるのは夢ばかり
  だからそれを君の足元に敷いてあげよう
  ぼくの夢なのだからそっと踏んで欲しい

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「帽子とベル」The Cap and Bells(壺齋散人訳)

  道化が 深く静まり返った
  庭の中を歩いていた
  道化は自分の魂に向かって
  彼女のいる窓辺に行くよう命じた

イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「女心」The Heart of the Woman(壺齋散人訳)

  わたしにはなんと小さな部屋だったでしょう
  そこにはお祈りする人と安らう人が溢れていた
  それであの人は物陰にわたしを連れて行って
  自分の胸にわたしを抱いてくれたのだわ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「ドゥーネイのバイオリン弾き」The Fiddler of Dooney(壺齋散人訳)

  ぼくはドゥーネイのバイオリン弾き
  フォークダンスの伴奏をするのさ
  従弟はキルバーネットの牧師さん
  兄さんはモハラビューイの神父さん

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き抜ける風」から「恋人に贈る詩」Aedh gives his Beloved certain Rhymes(壺齋散人訳)

  髪を黄金のピンで結わえてごらん
  ちりぢりになった毛を束ねてこらん
  ぼくもがんばって下手な詩をつくり
  それでもって日がな一日
  きみの悲しげな美しさを称えてみせるよ
  古の物語を材料にして

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「老母の歌」The Song of the old Mother(壺齋散人訳)

  わたしゃ夜明けとともにおきて働きずくめ
  まず火種を吹いて火をおこし
  洗濯やら料理やら掃除にあけくれ
  あっという間に一日が過ぎる

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