英詩のリズム


ウィリアム・Bイェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「黄昏の中へ」Into the Twilight(壺齋散人訳)

  わずかの間に擦り切れてしまった心よ
  真偽の網を潜り抜けて蘇れ
  もう一度黄昏の中で笑え
  もう一度朝露にため息をつけ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「満たされない聖体」 Unappeasable Host(壺齋散人)

  ダナの子どもたちが金色の揺籠の中で笑い
  いっせいに手を叩き 薄目を閉じているのは
  北風に乗って舞い上がろうとしているからだ
  翼を広げ風に乗ったハゲワシを追って

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「心の中のバラ」Aedh tells of the Rose in his Heart(壺齋散人訳)

  醜いものや壊れたもの 磨り減って古びたもの
  道端で叫び泣く子ども 荷車のきしむ音
  冬のぬかるみの中で鍬を振るう農夫の重い足取り 
  これらすべての忌まわしい眺めはぼくが抱く君のイメージとはそぐわない

ウィリアム・B・イェイツの詩集「葦を吹き渡る風」から「永劫の声」The Everlasting Voices(壺齋散人訳)

  永劫の声よ いまは黙っていてほしい
  天国に召されたものの世話をしていてほしい
  彼らならあなたの声に従うだろうから
  魂の炎として時間が消滅するその瞬間まで

ウィリアム・B・イェイツの詩集「薔薇」から「アイルランドの妖精たち」To Some I have Talked With By The Fire(壺齋散人訳)

  ダナアンについての気まぐれな詩を書きながら
  かつて友達と語り合った日々を思い出す
  わたしたちは暖炉のそばに身をかがめて
  アイルランドに伝わる妖精たちのことを語り合ったものだ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「薔薇」から「ファーガスとともに」Who Goes With Fergus?(壺齋散人訳)

  誰か ファーガスとともに車に乗り
  深い森の中の陰を突きぬけ
  平らな浜辺で踊ろうとするものはいないか?
  青年よ そのひなびた額を持ち上げよ
  少女よ そのやさしいまぶたを見開け
  希望を胸に 何者をも恐れるな
  いじけたままひとりぽっちで
  つれない愛を思い惑うな
  ファーガスなら運命の車を乗りこなし
  森の陰を隅々まで知りつくし
  おぼろな海に安息を見出し
  すべての星々を従えることが出来る

ウィリアム・B・イェイツの詩集「薔薇」から「白鳥」The White Birds(壺齋散人訳)

  愛する人よ ともに白鳥となって波の上に漂っていよう
  ほうき星の光芒を見続けているのには耐えられない
  地平線に低く架かった青白い星の光が
  ぼくらの心に消えない悲しみを掻き立てるから

ウィリアム・B・イェイツの詩集「薔薇」から「年をとったら」When You Are Old(壺齋散人訳)

  年をとってまどろみがちになったら
  暖炉のそばで この本を手に取り
  ゆっくり読みながら 思い起こしてごらん
  自分が若かった頃の瞳の耀きを

ウィリアム・B・イェイツの詩集「薔薇」から「子守唄」A Cradle Song(壺齋散人訳)

  天使たちがお前のベッドに
  寄りかかってお前を見てる
  みんな死んだ人たちとの付き合いに
  うんざりしてたんだ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「薔薇」から「妖精の歌」A Faery Song(壺齋散人訳)

  わしらは陽気な年寄りじゃ
  年寄りじゃ
  何千年生きたかわからない
  それほどの年寄りじゃ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「薔薇」から「イニスフリーの湖の小島」The Lake Isle Of Innisfree

  いまこそ腰を上げてイニスフリーへ行こう
  そこに粘土と漆喰で小さな小屋を建て
  畑に豆を九列に植え ミツバチの巣箱を据えて
  蜂といっしょにのんびり暮らそう

ウィリアム・B・イェイツの詩集「オイシーンの放浪」から「さらわれた子ども」The Stolen Child(壺齋散人訳)

  スルースウッドの山裾が
  湖に浸るところ
  そこに草の茂った小島があって
  青鷺が羽ばたいては
  眠たげなミズネズミたちを驚かす
  そこには俺たち妖精が
  イチゴや真っ赤なさくらんぼの
  詰まった樽を隠してあるんだ
  さあ人間の子どもよ
  その水辺に行ってごらん
  妖精と手を携えて
  この世の中にはお前の知らない嘆きの種がいっぱいあるんだ

ウィリアム・B・イェイツの詩集「アシーンの放浪」から「落葉」The Falling of the Leaves(壺齋散人訳)

  わたしたちを愛でてくれた長い草の葉に秋が来た
  麦わらに巣くうハツカネズミにも秋が来た
  頭上のナナカマドの葉は黄色く色づき
  野いちごの濡れた葉っぱも黄色くなった

エドガー・ポーの詩「夢の又夢」A Dream within a Dream(壺齋散人訳)

  あなたの額にわたしのキスを受けて欲しい
  そして あなたと別れるにあたり
  是非ひとこと言わせて欲しい
  たしかにあなたのいうとおり
  わたしの人生は夢だった
  けれど 夜の闇へ 白昼の彼方へ
  幻のように あるいは無となって
  希望が消え去ったからといって
  意味のない夢だったとはいえない
  わたしたちが見たり感じたりしてることも
  所詮は夢のまた夢なのだから

エドガー・ポーの詩「我が母へ」To my Mother(壺齋散人訳)

  わたしは思うのです 天上の天使たちでさえ
  愛について互いにささやきあうときには
  母の愛に勝るほど献身的な愛を
  感じさせる言葉は見つけられないだろうと

エドガー・ポーの詩「アナベル・リー」Annabel Lee(壺齋散人訳)

  それはそれは昔のこと
  海際の王国に
  ひとりの乙女が住んでいた
  その名はアナベル・リー
  彼女はただひたすらに生きていた
  わたしを愛し愛されるために

エドガー・ポーの詩「ヘレン」To Helen(壺齋散人訳)

  あなたとはただ一度お会いした
  そう遠くない過去に
  あれは七月の真夜中だった
  満月があなたの心のように
  天空の軌道をさまよい歩き
  銀色のヴェールのような光を
  沈黙と炎熱と無気力とをともないつつ
  バラたちの仰向いた顔に注ぎかけた

エドガー・ポーの詩「ベル」The Bells(壺齋散人訳)

  そりは鳴らす鈴の音
  銀の鈴
  喜びの世界からやってきた音!
  リンリンリンと鈴が鳴る
  冷たい夜をつんざいて!
  夜空いっぱいに散らばった
  星また星が輝くよ
  水晶のきらめきのように
  ゆったりとした時の流れを
  ルーンの調べに閉じ込めて
  妙なる響きを撒き散らすよ
  リンリンリンリンと鈴が鳴る
  鈴が鳴る
  ジングル ティンクル 鈴が鳴る

エドガー・ポーの詩「黄金郷」Eldorado(壺齋散人訳)

  派手ななりをした
  勇ましい騎士が
  晴の日も曇りの日も
  長い旅を続けていた
  歌を歌いながら
  黄金郷を求めて

エドガー・ポーの詩「ユーラリューム」Ulalume(壺齋散人訳)

   空はどんよりと灰色に染まり
     木の葉は縮れて干からび
    草の葉は干からびて萎れ
  そんな十月のさびしい夜
      忘れられないあの年の十月に
  わたしはオーベルの暗い湖畔を歩いた
     ウェア地方の霧に包まれて
  そして湿っぽい水辺に下りた
     ウェアの鬼の出そうな森の中で

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