英詩のリズム


ジョン・キーツの詩「恐れのとき」 When I have Fears を読む。(壺齋散人訳)

  わたしのペンがわたしの思いを書きつくすまで
  万巻の書を読み豊かな思想を
  収穫のように実らせることが出来るまで
  自分が生きてはいないだろうと思うと

ジョン・キーツの詩「アポロへの讃歌」 Hymn To Apollo を読む。(壺齋散人訳)

  黄金の弓を持つ神
  黄金の竪琴を奏でる神
  黄金の髪をなびかす神
  黄金の火を放つ神
  季節を運ぶ
  乗り物の御者
  神よあなたの怒りが静まるのをみて
  ちっぽけなわたしがあなたの花冠を
  あなたの月桂冠 あなたの栄光
  あなたの光を戴いたとしたら
  そんなわたしは地を這う虫に見えるでしょうか?
  おお デルフォイに坐す偉大なアポロよ

ハイペリオン(ヒュペリオーン)は、ギリシャ神話に出てくる神で、ゼウスが支配するようになる以前には、太陽を司る神であった。ゼウスは父親のクロノスを始め、タイタン(ティーターン)族に戦いを挑み、ついに長い戦争を勝ち抜いて、新しい宇宙の支配者になるが、この戦いの中で、ハイペリオンも敗れ、太陽の神の座をアポロに譲り渡す。

ジョン・キーツの詩「憂愁のオード」 Ode on Melancholy を読む。(壺齋散人訳)

  いやいや 忘却の川へ行ってはならぬ
  根を張ったトリカブトから毒の汁を搾ってもならぬ
  お前のその青ざめた額に
  冥府の女王の毒草を押し当ててもならぬ
  イチイの実でロザリオを作ったり
  カブトムシや毒蛾たちに
  お前の鎮魂歌を歌わせてはならぬ
  毛むくじゃらの梟にお前の悲哀を覗かせてはならぬ
  でなければ次々と襲い来る影が眠気を誘い
  魂の疼く苦悩を溺れさせるだろう

ジョン・キーツのオード「秋に寄す」 To Autumn を読む。(壺齋散人訳)

  霧が漂う豊かな実りの季節よ
  恵みの太陽の親密な友よ
  秋は日の光と手を携えて
  生垣を這う葡萄にも実りをもたらす
  苔むした庭木に林檎の実を実らせ
  一つ残らず熟させてあげる
  ひょうたんを膨らませ ハシバミの実を太らせ
  蕾の生長を少しずつ促して
  花が咲いたら蜂たちにゆだねる
  蜂たちは巣が蜜でねっとりとするのをみて
  暖かい日がずっと続くことを願うだろう

ジョン・キーツの詩「居酒屋マーメイド」 Lines on the Mermaid Tavern を読む。(壺齋散人訳)

  死んでいった詩人たちの魂よ
  あなたがたの通った居酒屋マーメイドは
  どんな素敵な野原やコケ蒸した洞窟
  どんな理想郷より素晴らしかったそうですね
  あなたがたの啜ったカナリアのワインは
  どんな飲み物にも増してうまかった
  天上のフルーツでさえも
  この店の鹿肉のパイにはかなわない
  何たる美味!
  あなたがたはロビンフッドのように
  マリアンのような女性をはべらせ
  鹿の角にワインをくんで飲んだのでしたね

ジョン・キーツのオード「ギリシャの壺に寄す」Ode on a Grecian Urn を読む。(壺齋散人訳)

  いまなお穢れなき静寂の花嫁よ
  沈黙と悠久の養女よ
  森の歴史家でもあるお前は
  誰よりもやさしく花物語を語る
  お前が神であれ人間であれ
  お前の姿にはテンペあるいはアルカディアの谷の
  緑に縁取られた伝説が付き添う
  お前に描かれたものは 男か神か 拒絶する乙女たちか
  狂おしき狩の追跡か 逃れようとする獣のあがきか
  ラッパと太鼓 荒々しい陶酔か

1819年は、ジョン・キーツにとって実り多き年であった。エンディミオンを通じて自分の詩風を確立したキーツは、その才能の限りを注ぎ込み、Great Odes と呼ばれる一連の美しい詩を作り出した。「ナイチンゲールに寄す」は、そのトップランナーとも称すべき作品である。

ジョン・キーツの詩「美しいけれど無慈悲な乙女」 La Belle Dame Sans Merciを読む。(壺齋散人訳)

  いかがなされた 鎧の騎士
  ひとり青ざめ さまよわれるとは?
  湖畔の草はことごとく枯れ
  鳥の声もせぬというのに

ジョン・キーツの詩「愛していますとあなたはいう」 You say you love を読む。(壺齋散人訳)

  愛していますとあなたはいう
  尼僧のようにか細い声で
  尼僧は鐘の音に合わせて
  夕べの祈りを歌っている
  真実の愛をわたしにおくれ!

ジョン・キーツの詩「デヴォンのお嬢さん」 Where be ye going, you Devon maid? を読む。(壺齋散人訳)

  どこへ行くの デヴォンのお嬢さん?
  あなたのバスケットに入ってるのは何?
  ぷちっと可愛く 牧場からやってきたあなた
  わたしにクリームを少しわけておくれ

ジョン・キーツの詩「12月のわびしい夜」 In drear-nighted December を読む。(壺齋散人訳)

  12月のわびしい夜でも
  幸せそうでいられる木は
  盛りの頃の枝振りを
  覚えているわけではないけれど
  ぴゅーぴゅーと吹き渡る
  北風に裸にされることもなく
  凍てつくような寒さでさえも
  芽生えを妨げることは出来ぬ

エンディミオン Endymion はギリシャ神話に現れるうら若き牧童である。余りにも美しいので、月の女神セレネに愛された。セレネはエンディミオンが人間として寿命があることを悲しみ、ゼウスに永遠の生を与えてくれるように願った。ゼウスはその願いをかなえてやったが、それは永遠の眠りにつく姿としてであった。

ジョン・キーツの詩「キリギリスとコオロギ」 On The Grasshopper And Cricketを読む。(壺齋散人訳)

  地面の詩人は決して死なない
  鳥たちが灼熱の太陽に消え入り
  涼しい木陰に隠れるときにも その声は
  牧場のあたりを 垣根から垣根へと鳴り渡る

ジョン・キーツのソネット「チャップマンのホメロスを一読して」 On First Looking Into Chapman's Homer を読む。(壺齋散人訳)

  いくたびか私は黄金の領域を旅し
  あまたの良き国や王国を訪ねたことか
  吟遊詩人がアポロのために治めている
  多くの西海の島々にも滞在した

ジョン・キーツ John Keats(1795-1821) は、パーシー・ビッシュ・シェリーと並んで、イギリス・ロマンティシズムの盛期を飾る詩人であり、その後のイギリスの詩に及ぼした影響は非常に大きなものがある。年上の友人でもあったシェリーと先輩格のリー・ハントが、ともにリベラリズムの信念から政治的な傾向を見せたのに対し、キーツは自然や人間の美を大事にし、美を歌うことこそが詩人の使命だと考えていた。こうした彼の態度が、作品に透明な輝きをもたらし、珠玉のように美しい詩を生み出させたのである。

ひとりぼっちの小鳥 A widow bird sate mourning for her Love:パーシー・シェリー(壺齋散人訳)

  ひとりぼっちの小鳥が冬の枝の上で
  夫をなくした嘆きを歌った
  木の上には冷たい風が忍び寄り
  木の下では小川が凍る

  裸の木には一枚の葉もなく
  地上には一輪の花もない
  あたりはひっそりと静まりかえり
  聞こえてくるのは水車の音だけ

愛の歌 Music, when soft voices die :パーシー・シェリー(壺齋散人訳)

  音楽は、やさしい音が消えた後も
  思い出の中に震えている
  匂いは、スミレの花が萎れた後も
  感覚の中に生きている

  葉は、バラがしなびてしまった後も
  愛する人のベッドを飾る
  思いは、あなたが死んでしまった後も
  愛の余韻となってただよう

ランプが砕けると When the Lamp is Shattered (パーシー・シェリーの詩:壺齋散人訳)

  ランプが砕けると
  明かりは塵にまみれて消える
  雲が飛び散ると
  虹はきれいな形を失う
  リュートが毀れると
  美しい音色は戻らない
  愛が言葉でいわれると
  中身はすぐに忘れ去られる

汚された言葉 One Word is Too Often Profaned (パーシー・シェリーの詩:壺齋散人訳)

  あまりに汚されてしまったために
  もはや汚しようのない言葉がある
  あまりにも侮られているために
  これ以上侮りえない言葉がある
  希望は絶望と紙一重だから
  そには制御しえないものがある
  でもあなたからの愛は
  何にもまして尊いもの

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