シェイクスピア


シェイクスピアのソネット55 Not marble, nor the gilded monuments(壺齋散人訳)

  王侯たちの大理石の像も金ぴかのモニュメントも
  この力強い詩より長く生き残ることはない
  君はこれらの詩句のなかで光り輝く
  時の流れに汚れた石像などよりもっと明るく

シェイクスピアのソネット48 How careful was I, when I took my way(壺齋散人訳)

  旅に出るときわたしは 念には念を入れて
  こまごまとしたものを金庫にしまって鍵をかけ
  わたしがそれらを使うまでは
  誰にも使われないよう気をつけたものだ

シェイクスピアのソネット43 When most I wink, then do mine eyes best see(壺齋散人訳)

  閉じられている時にこそ わたしの目はよく見える
  昼の間はものを見ても 見ていないも同然なのだ
  寝ている時には 夢の中で君が見える
  君の姿が暗闇の中に明るく浮かび出るのだ

シェイクスピアのソネット42  That thou hast her, it is not all my grief(壺齋散人訳)

  君が彼女を手に入れたことを 必ずしも嘆くのではない
  とはいってもわたしは彼女にぞっこんだった
  何よりも嘆かわしいのは彼女が君を選んだこと
  愛の喪失がわたしの胸を焦がすのだ

シェイクスピアのソネット38 How can my Muse want subject to invent(壺齋散人訳)

  わたしのミューズが創造の種に欠くことなどあろうか?
  君の息吹がわたしの詩のなかに注ぎ込み
  素敵な詩句をもたらしてくれるというのに
  それらは通俗的な作品などにはもったいないもの

シェイクスピアのソネット35 No more be grieved at that which thou hast done (壺齋散人注)

  自分のしてしまったことを嘆くのはもうやめたまえ
  バラには棘があるし 泉の底には泥がある
  雲は月を隠し 日食は太陽を黒くする
  可愛い蕾にも忌まわしい病気が潜んでいるものだ

シェイクスピアのソネット30 When to the sessions of sweet silent thought(壺齋散人訳)

  静かに甘い思い出にふける折
  過ぎ去ったことどもを思い起こそうとして
  探し求めている多くのものがすでにないことに気づき
  昔の悲しみを新たにして時の流れを嘆き悲しむ

シェイクスピアのソネット29 When, in disgrace with fortune and men's eyes(壺齋散人訳)

  運命にも他人の目にも見放され
  我が身の不遇を一人嘆きながら
  無益な叫びで聞く耳持たぬ天を煩わし
  つくづく自分を眺めては身の不運を呪うとき

シェイクスピアのソネット27 Weary with toil, I haste me to my bed(壺齋散人訳)

  くたびれ果ててわたしは寝床へと急ぐ
  旅に疲れた手足を伸ばせるところへと
  すると今度はわたしの頭の中での旅が始まり
  身体を休めている間に心を労するのだ

シェイクスピアのソネット23  As an unperfect actor on the stage(壺齋散人訳)

  駆け出しの俳優が舞台の上で
  不安に駆られて役を忘れるように
  怒りに取り付かれた男が勢いの余りに
  心の冷静さを失うように

シェイクスピアのソネット20  A woman's face with Nature's own hand painted(壺齋散人訳)

  私の情熱の主人にして女主人でもある君よ 
  自然が描き出した女性の顔を君は持っている
  君はまた女性のような優しい心も持っている
  それは普通の女のように浮気なものではない

シェイクスピアのソネット12 When I do count the clock that tells the time(壺齋散人訳)

  時計が時を告げる音を数えつつ
  日が沈んで恐ろしい夜が来るのを見ると
  スミレが花の盛りを過ぎて
  黒髪が白銀色に縮れるのをみると

シェイクスピアのソネット9 Is it for fear to wet a widow's eye(壺齋散人訳)

  君が結婚もせずに人生を浪費するのは
  死んで未亡人を悲しませないためかい?
  ああ!もし君が子どもを残さずに死のうものなら
  世間が未亡人のように悲しむだろうよ

シェイクスピアのソネット3 Look in thy glass, and tell the face thou viewest (壺齋散人訳)

  鏡の中を覗き込み、自分の顔に語りかけたまえ
  今こそそれと同じ顔を生み出すべき時なのだと
  君がもし子どもにその顔を伝えないならば
  君は世界をがっかりさせ 女性が母になる喜びを奪う

シェイクスピアのソネット集から第1番 From fairest creatures we desire increase を読む(壺齋散人訳)

  誰しも美しい者の子孫が増えて欲しいと思うもの
  そうすればバラの美しさは死に絶えないから
  親が時とともに艶を失っても
  子がその美しい面影を伝え続けるだろう

シェイクスピアのソネット集は1609年に始めて出版された。時にシェイクスピア45歳、劇作家としての名声を確立し、代表作の殆どをこの時期までに書き終えている。そのシェイクスピアがこの時期に長い間秘蔵していたソネット集を刊行した理由のひとつとして、当時流行していたペストの影響が挙げられる。この疫病によって、劇場も閉鎖される羽目に陥り、シェイクスピアはそこから収入を得ることができなくなったため、新たな収入源を得ようとしてソネット集を出版したとする説がある。

シェイクスピアのソネット集第18番「君を夏の一日と比べてみようか」Shall I compare thee to a summer’s day を読む。(壺齋散人訳)

  君を夏の一日と比べてみようか
  君のほうが素敵だし ずっと穏やかだ
  夏の荒々しい風は可憐な蕾を揺さぶるし
  それに余りにも短い間しか続かない
  時に太陽がぎらぎらと照りつけるけれど
  その黄金の輝きも雲に隠されることがある
  どんなに美しいものもやがては萎み衰え
  偶然や自然の移り変わりの中で消え去っていく
  でも君の永遠の夏は決して色あせない
  君の今の美しさが失われることもない
  死神が君を死の影に誘い込んだと嘯くこともない
  君が永遠の詩の中で時そのものと溶け合うならば
    人間がこの世に生きている限りこの詩も生きる
    そして君に永遠の命を吹き込み続けるだろう

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