シェイクスピア


シェイクスピアのソネット127 In the old age black was not counted fair(壺齋散人訳)

  昔は黒を美しいとはいわなかった
  仮にそう思っても美と呼ぶことはなかった
  ところが今や美の正当な後継者扱い
  かえって本物の美が貶められて私生児扱い

シェイクスピアのソネット121 'Tis better to be vile than vile esteem'd(壺齋散人訳)

  悪党だと思われるより 悪党であるほうがましだ
  そうではないのに そうだと非難されるくらいなら
  自分はそう感じないでも 他人の目にそう映れば
  正当な快楽も台無しになる

シェイクスピアのソネット119  What potions have I drunk of Siren tears(壺齋散人訳)

  何という妙薬を私は飲んだことか
  それは汚らしいランビキで蒸留したシレーヌの涙
  恐れには希望を 希望には恐れを処方するというが
  勝ったつもりが負けてばかりの有様なのだ

シェイクスピアのソネット116  Let me not to the marriage of true minds(壺齋散人訳)

  真実の心と心が結ばれるにあたり
  障害を介入させないようにしよう
  事情が変われば自分も変わり 相手次第で心を移す
  そんな愛は愛とはいえない

シェイクスピアのソネット111  O, for my sake do you with Fortune chide,(壺齋散人訳)

  お願いだから あの運命の女神を非難してくれたまえ
  私に悪弊を植え付けた罪深き女神を
  彼女が私のために授けてくれたのは
  世渡りに必要な処世術だけだ

シェイクスピアのソネット106  When in the chronicle of wasted time(壺齋散人訳)

  過ぎ去った時代の年代記の中に
  美しい人々が描かれているのを読み
  今はなき貴婦人や紳士たちを称賛しながら
  美が美しい詩句を生み出すのを見ると

シェイクスピアのソネット102  My love is strengthen'd, though more weak in seeming;(壺齋散人訳)

  私の愛は弱まったのではなく かえって強まったのだ
  仕草に現さないからといって 愛し方が弱いわけではない
  舌があたりかまわずすばらしさを吹聴するような愛
  そんな愛は売り物の愛に過ぎないのだ

シェイクスピアのソネット101 O truant Muse, what shall be thy amends(壺齋散人訳)

  美に染められた真理を無視し続けたことについて
  怠惰なミューズよ  お前はどう釈明するのだ
  真理も美も 私が愛する人に依存する
  お前とて同じこと 彼あってこそ威厳がつくのだ

シェイクスピアのソネット98 From you have I been absent in the spring(壺齋散人訳)

  春の間私は君と離れて過ごした
  誇らしげな四月は色鮮やかな装いのうちに
  萬物に青春の息吹を吹き込み
  陰気なサターンでさえ笑いかつ踊ったほどだ

シェイクスピアのソネット94  They that have power to hurt and will do none(壺齋散人訳)

  人を傷つける力を持ちながらそうしない人
  外見はいかめしいがいかめしく振舞わぬ人
  他人を動かしながら自分は石のように
  動揺せず冷静で誘惑には慎重な人

シェイクスピアのソネット91  Some glory in their birth, some in their skill(壺齋散人訳)

  ある者は家柄を誇り ある者は技術を誇る
  ある者は富を ある者は体力を
  ある者は俗悪とはいえ衣装を誇り
  ある者は鷹や犬や あるいは馬を誇る

シェイクスピアのソネット89  Say that thou didst forsake me for some fault(壺齋散人訳)

  私に欠点があるから見捨てたのだといいたまえ
  それに対しては言い訳することがある
  私が足なえだといいたまえ 動き回るのをやめるから
  だが君がいうことに対してとやかく言うのはやめよう

シェイクスピアのソネット87  Farewell! thou art too dear for my possessing(壺齋散人訳)


  さようなら 君は私が所有するには価値が高すぎる
  君も自分の値打ちが十分にわかっている
  君の価値の権利証書が自由放免を保障するのだ
  君に対する私の権利は期限切れとなってしまった

シェイクスピアのソネット81  Or I shall live your epitaph to make(壺齋散人訳)

  私が生き残って君の墓碑銘を書くことになろうと
  私が墓の中で朽ち果てて君が生き残ろうと
  これからは死でさえも君の記憶を消せないだろう
  たとえこの私が死んでこの世から消え去ったとしても

シェイクスピアのソネット76  Why is my verse so barren of new pride(壺齋散人訳)

  何故こうも私の詩には新鮮味がなく
  多様さにも変化にも欠けているのか
  何故時には趣向をかえて
  新たな詩法や変わった言い回しを用いないのか

シェイクスピアのソネット73  That time of year thou mayst in me behold(壺齋散人訳)

  君が私のうちに見るのは一年のうちのあの季節
  冷たい風に揺れる枝には葉もなく
  あったとしても黄色い枯葉が二三枚
  小鳥たちが歌っていた聖歌堂も今は廃墟だ

シェイクスピアのソネット71  No longer mourn for me when I am dead(壺齋散人訳)

  私が死んだからといって もう泣かないでくれたまえ
  せめて無愛想で陰気な鐘が鳴り響き
  私の死を世間に知らせている間にしてほしい
  邪悪な虫が住む邪悪な世の中から私は飛び去るのだ

シェイクスピアのソネット63  Against my love shall be, as I am now(壺齋散人訳)

  わたしの愛する人も 今の私のように
  時の凶暴な手にかかって打ちのめされるだろう
  時の流れが彼の血を干からびさせ
  その額を皴だらけにするとき

シェイクスピアのソネット62  Sin of self-love possesseth all mine eye(壺齋散人訳)

  自惚れという罪が私の目や魂
  私のあらゆる部分に取り付いている
  この罪は私の心に深く根を下ろし
  誰も取り除くことはできない

シェイクスピアのソネット60 Like as the waves make towards the pebbled shore(壺齋散人訳)

  あたかも波が砂浜に向けて押し寄せるように
  我々の命も終末に向かって先を急ぐ
  後ろのものは前のものと場所を入れ替わり
  次々と争うように前へ進んでいく

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