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詩人の魂




2007年8月23日

秋の歌(ヴェルレーヌ:サチュルニアン詩集)

「秋の歌」は、ヴェルレーヌの作品の中で、少なくとも日本人にとっては、もっとも親しまれているものである。ヴェルレーヌの詩を特徴付けているあの音楽的な要素が、これほど完璧に成功している作品はないと思われるのだ。

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2007年8月29日

女と猫(ヴェルレーヌ:サチュルニアン詩集)

ヴェルレーヌはボードレールの落とし子の一人ではあったが、ボードレールのように猫を歌うことはあまりなかった。そんな中で猫をとりあげて歌ったこの詩は珍しいものといえる。だが、詩に歌われた猫は、ボードレールの猫とは異なり、人間の女を思わせるようだ。

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2007年8月30日

バルコニーにて(ヴェルレーヌ:女の友達)

「女の友達」はヴェルレーヌの第2詩集である。わずか6篇のソネットから成るこの小さな詩集を、ヴェルレーヌがどんな意図から世に出したのか。すでに第一詩集「サチュルニアン詩集」によって、独自の世界を築いていたヴェルレーヌは、自分の世界をもっと確かな形にしようと思ってこの詩集を編んだのかもしれない。

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2007年9月 5日

月の光 (ヴェルレーヌ:艶なる宴)Fêtes Gallantes

艶なる宴 Fêtes Gallantes は、ヴェルレーヌにとって実質的には第二歌集である。サチュルニアン詩集によって、彼の独創性は広く認められるようになったが、この詩集はその延長上にあって、音楽的な要素や、甘い感情を歌った。

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2007年9月 6日

センチメンタルな対話(ヴェルレーヌ:艶なる宴)

ヴェルレーヌは甘ったれた性格で、他人を思いやる心に欠け、どうしようもない類の人間だったようである。いわば重症の性格破綻者だったと思われるのだ。もし詩を書くことがなかったなら、鼻持ちならぬ人間として、世間から排除されてしまっただろう。

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2007年9月12日

ヴェルレーヌ:よき歌 La Bonne Chanson

ヴェルレーヌは友人シヴリーを通じてマチルド・モーテを紹介されるとたちまち恋に陥り、しつこく求愛するようになる。マチルドの両親はヴェルレーヌを警戒したようであったが、ヴェルレーヌはマチルド本人を陥落させようとして、愛の詩を作っては、せっせと送り届けた。その甲斐もあってか、ヴェルレーヌはマチルドと婚約することができたのである。

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2007年9月13日

ヴェルレーヌ:言葉なき恋歌 Romances sans Paroles

詩集「言葉なき恋歌」 Romances sans Paroles は、ヴェルレーヌがランボーとの痴話げんかがもとでモンスの刑務所に服役している間に出版された。時に1974年3月。ヴェルレーヌはまだ30歳になっていなかった。

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2007年9月19日

涙あふるる我が心(ヴェルレーヌ:言葉なき恋歌)

「言葉なき恋歌」に収められた作品には、恋のけだるさを歌ったものが多い。それらの恋が男女の間のものなのか、それともヴェルレーヌとランボーとの間のものなのか、一篇づつから読み取ることはむつかしい。

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2007年9月20日

わたしの心は悲しかった(ヴェルレーヌ:言葉なき恋歌)

「わたしの心は悲しかった」と題するこの詩は、ヴェルレーヌの特徴である感傷性と音楽性が最もよく調和した逸品であり、彼の一つの到達点を示している。だが、そこには深い精神性は感じられない。どちらかというと、言葉がそれを発した人間とは無関係に、自分自身に酔っているような風情だ。

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2007年9月26日

ヴェルレーヌ:叡智 Sagesse

1873年の夏に、ランボーとの間に引き起こした事件がもとで、ヴェルレーヌは1年半余りモンスの刑務所に服役した。この間にヴェルレーヌは信仰上の回心を体験し、カトリックに深く帰依するに至る。そしてその信仰を膨大な詩に残した。詩集「叡智」に収められた作品群がそれである。

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2007年9月27日

何故かは知らねど(ヴェルレーヌ:叡智)

ヴェルレーヌの詩集「叡智」は、ランボーとの別れの苦さを歌ったものと、宗教的な改心を告白したものとからなっている。前者の多くは獄中で書かれた。

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2007年10月 3日

詩の作法 Art poétique (ヴェルレーヌ:昔と近頃)

晩年のヴェルレーヌは酒びたりのただれた生活を送った。梅毒のために健康がさいなまれもし、病院を出たり入ったりもした。だが、詩人としての名声はようやく高まり、彼のもとには若い詩人たちが集まるようにもなった。

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2007年10月10日

エディット・ピアフ Edith Piaf :シャンソンの女王

エディット・ピアフ Edith Piaf (1915-1963) といえばシャンソンの女王といわれ、20世紀のシャンソン界を象徴する存在だ。その伝記を題材にしたフランス映画が上映されると聞き、大のピアフ・ファンである筆者は早速見に行った。

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2007年10月11日

バラ色の人生 La Vie en Rose:エディット・ピアフ

「バラ色の人生」 La Vie en Rose はエディット・ピアフ Edith Piaf の代表作であるにとどまらず、シャンソン史上の記念碑ともいうべき歌である。1946年にピアフがこの歌を歌いだすや、瞬く間に世界中の人々の心を捕らえた。

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2007年10月17日

愛の讃歌 Hymne à l'Amour:エディット・ピアフ

「愛の讃歌」 L’hymne a l’amour は「バラ色の人生」 La vie en rose とともに、エディット・ピアフ Edith Piaf の代表的な曲である。ピアフ自ら作詩した。

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2007年10月18日

三つの鐘 Les Trois Cloches:ピアフ

エディット・ピアフ Edith Piaf が歌ったシャンソン「三つの鐘」 Les Trois Cloches (壺齋散人訳)

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2007年10月24日

パリの空の下 Sous le ciel de Paris

パリの空の下 Sous le ciel de Paris は「望郷」Pépé le Moko で知られる映画監督ジュリアン・デュヴィヴィエ Julien Duvivier が1951年に公開した同名の映画の主題歌である。もともとはジュリエット・グレコ Juliette Greco が歌っていたが、エディット・ピアフ Edith Piaf やイヴ・モンタン Yves Montant も歌い、むしろグレコより人気を博した。

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2008年3月26日

レミ・ド・グールモン Rémy de Gourmont :生涯と作品

レミ・ド・グールモン Rémy de Gourmont (1858-1915) はフランスのサンボリストを代表する作家の一人である。日本では詩人として知られているが、フランスにおいては生前より幅広い評論活動によって知られ、その独特の美学は、エズラ・パウンド Ezra Pound やエリオット T.S.Eliot など、英語圏の作家によって高く評価された。オールダス・ハックスレイ Aldous Huxley はグールモンの評論を英語に翻訳して紹介している。

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アガートAgathe :レミ・ド・グールモン

レミ・ド・グールモンの詩集「天国の聖女たち」 Les Saintes du Paradis から「アガート」Agathe を読む。(壺齋散人訳)

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2008年3月27日

毛 Les cheveux :レミ・ド・グールモン

レミ・ド・グールモンの詩は、堀口大学が精力的に翻訳して紹介したので、日本人にはなじみが深い。中でも詩集「シモーヌ」に収められた諸篇は、グールモンの雰囲気をよく表しているものとして、喜んで受け入れられた。この詩集の中にでてくるシモーヌは、特定の女性というのではなく、グールモンにとっての女性の原像のようなものだったらしい。


毛(壺齋散人訳)

  シモーヌ お前の毛の林の中は
  不思議なことだらけだ

  お前は干草の匂いがする
  お前は獣が寝そべった石の匂いがする
  お前はなめし皮の匂いがする
  お前は籾殻をとった麦の匂いがする
  お前は木の匂いがする
  お前は朝食のパンの匂いがする
  お前は廃墟の壁ぞいに咲いた
  花の匂いがする
  お前はブラックベリーの匂いがする
  お前は雨に洗われた蔓の匂いがする
  お前は夜の墓場で摘まれる
  イグサや羊歯の匂いがする
  お前はコケの匂いがする
  お前は生垣の陰に落ちた
  赤茶けた枯葉の匂いがする
  お前はイラクサや子馬の匂いがする
  お前はウマゴヤシやチーズの匂いがする
  お前はウイキョウやアニスの匂いがする
  お前はクルミの匂いがする
  お前は熟れた果実の匂いがする
  お前は柳の葉の匂いがする
  お前は花盛りのライムの匂いがする
  お前は蜜の匂いがする
  お前は草原を行く人の汗の匂いがする
  お前は大地と川の匂いがする
  お前は愛と火の匂いがする

  シモーヌ お前の毛の林の中は
  不思議なことだらけだ

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