人間の科学


肥満の行き着く先が糖尿病だということは誰でも知っている。人が何故肥満するかといえば、それは摂取する栄養分が代謝に必要なエネルギー源を上回るからだ。人間の体はこの余計な栄養分を脂肪などの形で細胞内に蓄える。一種の貯蓄と考えてよい。ところが肥満があまりにも進むと、この貯蓄の機能がうまく働かなくなる。その結果血液中の栄養分は細胞によって吸収されずにそのまま血液中に残り続ける。これが糖尿病発症メカニズムの基本パターンである。

フランス人がセックスを巡る事柄に鷹揚なことはよく知られている。特に女性は、ほかの国の女性たちに比べセックスへのタブー意識が弱いとされる。既にヴィヨンの時代から、パリ女たちはセックスを謳歌し、年老いた女たちもセックスの喜びから遠ざけられることを何よりの痛恨事としてきた。

人間を含めて哺乳類の屁が臭い理由は、屁の中に含まれている硫化水素の匂いにある。腐った卵が発するのと同じ気体である。化学的には、硫黄と水素の化合物で、箱根の大涌谷など火山地帯からも放出されている。哺乳類の場合には、直腸にいるバクテリアがこの気体を生成し、肛門を通じて放出しているのだ。

腰痛は二足歩行を選択した人類にとって宿命の病だといわれてきた。約600万年前に、チンパンジーと共通の祖先から枝分かれして以来、人類は二足で直立するようになって、脊椎で重い上体を支えなければならなくなり、その結果腰痛に悩むようになったとされてきたのである。

チョコレートに心臓病を予防する効果があることを、イタリアの研究グループが突き止めた。モリ・サニというプロジェクトがそれで、毎日少量のブラックチョコレートを食べ続けることが、血管の炎症を防ぎ、ひいては心臓血管障害や脳卒中の予防につながるというのだ。ただし食べ過ぎると効果がなくなり、またミルクチョコレートではだめだということだ。

人間つねにハッピーな気分でいたいものだ。ハッピーな気分に浸っていられれば、生きていることが楽しいし、その結果世界に対して活動的で開かれた姿勢をとることができる。また自分自身に充実感が持て、出来事に関してよりよい選択を下し、周囲ともよりよい友好関係を築くことができる。

歩くこと、走ることは、運動の中でも基本的なものだから、健康にプラスに働くことはいうまでもない。走ることつまりランニングは、長生きにもつながる。スタンフォード大学の研究グループは、ランニングが寿命を長引かせる効果について研究を重ねた結果、それを数字の上でも実証してみせた。

昔から、女が男より長生きすることは、経験的に知られている。今日の先進諸国においては、女の平均寿命は男より5年から10年長い。100歳以上生きる人の圧倒的多数は女である。何故そうなのか。

世の中には勤勉で働き者の人間がいる一方で、働くことの嫌いな怠け者の人間がいるものだ。これは動物についてもいえる。「ナマケモノ」のように、種全体が怠け癖に染まった動物がいるほか、一例をネズミにとって見ても、動き回るのが好きなやつと、じっとしているのが好きなやつが混在している。

地上の動物の中で二足歩行を常態としているものは人間だけである。人間に近い類人猿であるチンパンジーも二足歩行をするが、普通は四肢を用いて歩行する。二足歩行を常態として行うには、骨格や筋肉組織がそれに対応できていなければならない。背骨がS字型を描き、太股を中心にした脚の筋肉と骨盤底筋が発達していることが必要条件である。

人が自分の老化を実感するのには、様々なきっかけがある。まず外貌だ。髪の毛が白くなり、肌がたるんで、そこここに目障りな皴やしみができる。目には輝きがなくなり、何となくうつろな表情が、老いを、自分にも他人にも感じさせる。

言語を操るためには高度な知性が必要なことはいうまでもない。目前に展開する対象を弁別することに始まり、対象を構成する要素間の関係やそれらの生起や因果関係についての論理的な思考過程があってこそ、言語は可能となる。というより言語とは、思考の過程そのものが知覚しうる形をとって現れたものなのだ。

睡眠は、特に女性にとっては、美容と深い関連がある。寝不足がたたると、いわゆる寝ぼけ眼になることはもちろん、肌も荒れがちになるし、美容によくないことは経験的に良く知られているところだ。睡眠不足の影響はそれのみにとどまらない。特に女性の場合には、心筋梗塞や糖尿病の引き金にもなることが、最近少しずつわかってきた。

地球上に生息する脊椎動物のうちで、人間と類人猿だけは尻尾を持っていない。類人猿はチンパンジーと人間の共通の祖先が登場したときには、既に尻尾を失っていたが、それが何時頃に遡るのかについては、類人猿全体の祖先が二足歩行を始めた時であろうと考えられる。というのも、二足直立歩行と尻尾の不在は切り離しがたく結びついていると思われるからだ。

LIVE SCIENCEのWeb上の記事を閲覧していたら、不思議な話にいきあたった。人間の歯、およびその周囲の組織や骨を用いて角膜を再生することができるというのである。学会用語で歯根部利用人工角膜 Osteo Odonto Keraprosthesis というのだそうだ。これまで、失われた角膜の機能を回復する方法は移植しかないと思われていたので、この技術が実用化されれば、画期的なことである。

どんなに激しい恋をして結婚したカップルも、その激情をいつまでも保ち続けることはむつかしい。ハネムーンの時期が過ぎて子どもが生まれ、生活のパターンが安定してくるにつれて、結婚当初の激情的な愛に結ばれた関係は、次第に落ち着いたものへと変わっていく。そして10年、15年とたつうちに、結婚生活はすっかりマンネリ化し、互いの存在が空気のようなものに成り果てる。配偶者に接しても、恋人時代の頃のように、胸がときめくことはない。

かゆいところを掻くという動作は、人間が生来もっている反射的な行動パターンである。犬や猫など人間以外でも、掻く動作をする動物はいる。熊やリスなども皮膚を掻く動作をするようだ。象やキリンのような大型動物も同様かどうか、筆者は実際に目撃したことがないので、確かなことはいえないが、恐らく掻くのであろう。

地球上に棲息するすべての脊椎動物が魚類から進化したことは、ダーウィン以来の進化論が推測していたことであるが、その直接的な物証はなかなか見つからなかった。ところが4年前に、カナダの北極圏で発見された3億7500万年前の魚の化石には、首と手足がついていた。発見者のシュービン Neil Shubin 博士は、この魚が、水中から陸上へと進出した最初の魚だったのではないかと考え、今日の地上の脊椎動物、ひいては人類にとっても直接の祖先だろうと推測した。

アメリカ・カリフォルニア州の企業が、ヒトのクローン胚の形成に成功したというニュースを発表し、世界を騒がせている。不妊治療中の女性から取り出した卵子をもとに、その固有の細胞を取り除いた上で、実験者の皮膚から取り出した細胞を植え込んだ結果、成熟したクローン胚に成長したという。妊娠後五日目の胚に相当するそうだ。このまま女性の子宮におけば、実験者の遺伝子を受け継いだクローンベビーが生まれてくるだろう。

京都大学山中教授らのグループが人の皮膚細胞を用いて万能細胞を作り出したことから、再生医療が俄かに現実味を帯びてきた。教授らはこの方法を用いて、既にネズミの心臓に近いものを作り出しているそうだ。この分野はいまや世界中の研究者の間で功名争いの最前線になっており、誰が最も早く人間の臓器や組織を人工的に作り出せるか、厳しい競争が繰り広げられている。

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