日本神話は、八世紀初頭に成立した古事記、日本書紀を中核にして、諸国の風土記の記述などを包み込んだ形で今日に伝えられている。日本の国の成り立ちと神々の系譜、そして天皇による支配の正統性を、きわめて体系的に描いたものである。世界中にある神話の中でも、イデオロギー性の強いものといえるが、同時に日本民族の世界観の原点というべきものが、色濃く反映されてもいる。
神話というものは、民族の遠い昔の記憶を凝集したようなところがあるから、そこには、民族の成り立ちや、世界観、宗教観の端緒というべきものが盛り込まれている。日本神話もまた例外ではない。我々は、日本神話を読み解くことによって、日本民族がどこから来たか、日本語はどのようにして形成されたか、などについて推論することが出来る。
日本神話にはしかし、それ自体としても、人々の想像力に訴えかけるものがある。記紀の世界は、この国で最初に書かれた壮大な叙事詩ともいえるのだ。
ここでは、日本神話の諸相について、様々な角度から考えてみたい。
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