ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」 Songs of Experience から「土くれと石ころ」The Clod & the Pebble を読む。〔壺齋散人訳〕
土くれと石ころ
愛は自分の楽しみを求めない
愛は自分への気遣いはしない
それは他の人に安らぎをもたらし
地獄の絶望の上に天国を建てようとする
ちっぽけな土くれがそう歌った
牛たちの足に踏みつけられながら
でも小川を流れる小石は
土くれとの出会いを避けた
愛は自分自身を楽しませるためのもの
自分の快楽のために他の人はある
他人の不安の中にも喜びはある
そして天国にも地獄を作って憚らない
「土くれと石ころ」と題するこの詩は、愛とは何か、その本質はどこにあるかについて歌ったものである。世の中には愛する対象にささげられる、献身的で無私の愛もあれば、もっぱら他人の愛を享受するのみの利己的な愛もある。
ブレイクはこのことを、土くれと石ころに事寄せて歌う。土くれは無心の愛を、石ころは利己の愛をシンボライズしている。両者はそれぞれ自分の考えを述べ合うのみで、互いに交じり合うことはない。
無心の愛は、「無垢の歌」に盛られた人間の尊いを暗示しており、利己の愛はこれから展開される「経験」の世界を先取りしているのであろう。
The Clod & the Pebble William Blake
Love seeketh not Itself to please,
Nor for itself hath any care;
But for another gives its ease,
And builds a Heaven in Hells despair.
So sang a little Clod of Clay,
Trodden with the cattles feet:
But a Pebble of the brook,
Warbled out these metres meet.
Love seeketh only Self to please,
To bind another to Its delight:
Joys in anothers loss of ease,
And builds a Hell in Heavens despite.
関連リンク: 英詩のリズム>ブレイク詩集「経験の歌」
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