ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」 Songs of Experience から「ゆりの花」The Lilly の歌(壺齋散人訳)
ゆりの花
慎ましやかなバラにはとげがある
おとなしい羊も大声を立てる
白ゆりは愛の喜びにひたりながら
とげや大声が美しさを損なうことはない
美しいバラにはとげがあり、おとなしい羊も時には大声を上げて人を驚かす。それに比べて純白のゆりは、無防備で人を受け入れる。それは純粋無垢の乙女のようでもあり、飾らない愛を思わせる。
ゆりは、ヨーロッパの人々にとっては常に、純愛を想起させてきたようだ。バルザックも谷間のゆりにことよせて、人の真実の愛を描いた。日本の山野に自生するゆりが、時にけばけばしい模様と強烈な匂いで人を眩ませることがあるのに対して、ヨーロッパのゆりは清楚そのものの印象をもたらし続けてきたようだ。
この詩は、「経験の歌」の中でも、だいぶ趣を異にしている。純真さを歌うところは、「無垢の歌」の延長のようでもある。
The Lilly William Blake
The modest Rose puts forth a thorn:
The humble Sheep, a threatning horn:
While the Lilly white, shall in Love delight,
Nor a thorn nor a threat stain her beauty bright
関連リンク: 英詩のリズム>ブレイク詩集「経験の歌」
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