陶淵明「飲酒二十首」から其八「青松在東園」を読む。
飮酒其八
青松在東園 青松 東園に在り
衆草沒其姿 衆草 其の姿を沒するも
凝霜殄異類 凝霜 異類を殄さば
卓然見高枝 卓然として高枝を見はす
連林人不覺 林に連なりては人覺らず
獨樹衆乃奇 獨樹 衆乃ち奇とす
提壺挂寒柯 壺を提げて寒柯に挂け
遠望時復爲 遠望 時に復た爲す
吾生夢幻間 吾生は夢幻の間
何事紲塵羈 何事ぞ塵羈に紲がる
青松が東薗に立っている、普段は雑草に覆われて目立たないが、霜が降りて草が枯れ果てると、高くそびえかつ堂々たる姿を現す、林に取り囲まれていては気づかないものだが、独り立ちした姿は立派なものだ
壺を提げて松の枝につるし、時に遠くから眺めたりする、人生は夢幻のようなもの、何を好んで塵にまみれた羈につながれることがあろうか
青松の孤高の姿をみずからになぞらえたものか。役人どもに交わっていては、雑魚のような生き方に甘んじねばならぬが、自分はこうして一人悠然と暮らしている。その生き方の間違っていなかったことを、自分は今青松の孤高の姿から納得するのだ。そんな感懐を歌ったのであろう。
後半は、いささか趣向を変え、松につないだ壺の姿を通じて、再び塵羈につながれざらんことを決意している。人生を夢幻の間に喩えるのは、陶淵明らしいレトリックだ。
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