ボードレール詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal より「悪運」Le Guignon を読む。(壺齋山人訳)
悪運
かかる重荷を持ち上げるには
シジフォスよ お前の忍耐がいる
どんなに頑張ってみたところで
道は長く 人生は短い
名高い墓地からは遥か離れ
俺はさびしい墓場に向かって
くぐもった太鼓の音のような
葬送の曲を奏でるのだ
そこにはあまたの宝石が埋まる
暗黒と忘却に包まれて
つるはしもドリルも届きはしない
あまたの花が悔恨のうちに
秘めやかな香を立てる
深い孤独に包まれながら
この詩はボードレールの草稿に1852年と記載されているから、その年かあるいはそれ以前に書かれたのだろう。Guignon という言葉はサント・ブーヴが使ったものをボードレ-ルが転用したのだとされる。この詩のもともとの題は「知られざる芸術家」といったのだった。
ここでは「悪運」と訳したが、「不運」の方が適切かもしれない。詩が描いているのは忘れられた詩人エドガー・ポーのことであり、ポーは運に見放された作家だったからだ。
詩は、そのポーが埋められたさびしい墓場を想像している。墓に埋まっている宝石や、ひめやかな花の香は、ポーを連想したものである。
Le Guignon — Charles Baudelaire
Pour soulever un poids si lourd,
Sisyphe, il faudrait ton courage!
Bien qu'on ait du coeur à l'ouvrage,
L'Art est long et le Temps est court.
Loin des sépultures célèbres,
Vers un cimetière isolé,
Mon coeur, comme un tambour voilé,
Va battant des marches funèbres.
— Maint joyau dort enseveli
Dans les ténèbres et l'oubli,
Bien loin des pioches et des sondes;
Mainte fleur épanche à regret
Son parfum doux comme un secret
Dans les solitudes profondes.
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