ウィリアム・ブレイクの詩集「経験の歌」 Songs of Experience から「幼子の嘆き」 Infant Sorrow (壺齋散人訳)
幼子の嘆き
母ちゃんはうめき 父ちゃんは泣く
恐ろしいところに生まれてきちゃった
力なく 真っ裸で オギャアと泣くだけ
雲に隠れた小悪魔のように
父ちゃんの手の中でじたばたし
縛り紐に逆らって暴れるけれど
自分でせいぜいできることは
母ちゃんのおっぱいに吸い付くだけ
「幼子の嘆き」と題するこの詩は、「無垢の歌」にある「生まれた喜び」の対極を歌ったものだ。世の中には望まれて生まれてくる子もあれば、このように望まれずして生まれてくる子もある。望まれない子は、両親や世の中の雰囲気を敏感に感じ取り、反発せざるを得ない。
ここでは自分を愛してはくれない両親に対して、幼子は危険を感じ取っている。しかし無力な幼子は力なくじたばたするのみだ。そのさまが小悪魔のようだというのは、いかにも悲しい比ゆであるといえる。
だが幼子は生きる希望を捨てはしない。精一杯の力を振り絞って、母親の胸にしゃぶりつくのである。
Infant Sorrow William Blake
My mother groand! my father wept.
Into the dangerous world I leapt:
Helpless, naked, piping loud;
Like a fiend hid in a cloud.
Struggling in my fathers hands:
Striving against my swadling bands:
Bound and weary I thought best
To sulk upon my mothers breast.
関連リンク: 英詩のリズム>ブレイク詩集「経験の歌」
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