ボードレール詩集「悪の華」 Les Fleurs du Mal から「梟」 Les Hiboux を読む。(壺齋散人訳)
梟
イチイの木の暗い枝陰に
一列に並んでとまった梟
異郷の神のような彼らは
赤い目を光らせ瞑想に耽る
身動きもせずじっとしながら
憂鬱な時間が来るのを待つ
沈み行く太陽を押しのけて
暗闇が広がる時間だ
その姿は賢者たちに
世に恐るべきは運動と
騒擾であることを教える
人間は移ろう影に夢中になり
変化を欲したがゆえに
罰を背負って生きねばならぬ
この詩は1851年に発表された11編の「冥府」詩集の中に含まれている。書かれたのはその直前らしい。ボードレールはこの詩の中に盛り込んだモチーフが気に入っていたらしく、同じようなテーマを扱った詩を集めて、「哲学的なフクロウたち」 Les Hibous Philosophics という題名で、出版を試みたほどだった。
詩の中のフクロウは、瞑想好きな詩人の象徴として描かれている。詩人すなわち賢者にとっては、暗闇の中で、じっと瞑想している姿が相応しい。眼前の快楽に夢中になったり、気晴らしを求めてあちこちさまようのは、人間の業とはいえ、それは自らを破滅させる原因ともなるのだ、ボードレールはこういって、静かな瞑想に悦楽を求めているのである。
Les Hiboux - Charles Baudelaire
Sous les ifs noirs qui les abritent
Les hiboux se tiennent rangés
Ainsi que des dieux étrangers
Dardant leur oeil rouge. Ils méditent.
Sans remuer ils se tiendront
Jusqu'à l'heure mélancolique
Où, poussant le soleil oblique,
Les ténèbres s'établiront.
Leur attitude au sage enseigne
Qu'il faut en ce monde qu'il craigne
Le tumulte et le mouvement;
L'homme ivre d'une ombre qui passe
Porte toujours le châtiment
D'avoir voulu changer de place.
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