睡眠は、特に女性にとっては、美容と深い関連がある。寝不足がたたると、いわゆる寝ぼけ眼になることはもちろん、肌も荒れがちになるし、美容によくないことは経験的に良く知られているところだ。睡眠不足の影響はそれのみにとどまらない。特に女性の場合には、心筋梗塞や糖尿病の引き金にもなることが、最近少しずつわかってきた。
アメリカの研究者スアレス博士は、成人の男女を対象に、睡眠のパターン(眠りに付くまでに要する時間と睡眠の長さなど)と、コレステロール、インスリン、グルコースおよびフィブリノーゲンをはじめとした血液凝固因子との間に、どのような関連があるか、調査を続けてきた。
その結果、睡眠不足が心筋梗塞および糖尿病の引き金となるこれらの危険因子と深い関連を有していることを突き止めた。ところがそれは女性にのみ顕著に現れ、男性においては有意な関連が見られないということなのだそうだ。
博士は、これを不思議に感じ、他に影響因子があるのかもしれないと考えて、年齢、人種(黒人は睡眠不足になりやすいといわれる)、喫煙などをも考慮に入れて更に詳しく調査をしてみた。それでも結果はゆるがなかった。
この結果をもとに博士は、女性にとっては、睡眠不足が成人病につながる可能性が高いという結論を導き出した。
何故女性だけがそうなのかについては、まだ確固たる理由は見出されていない。博士は今のところ、ホルモンの一種テストステロンが何らかの働きをしているのではないかと推測している。
テストステロンは男性ホルモンともいわれるように、男性の男性らしさを演出するホルモンで、主に睾丸で作られる。またこのテストステロンには成人病の因子を抑制する作用があることがわかっている。
睡眠不足に悩む男性は、テストステロンの量が通常の男性にくらべ異常に高い。彼らはしかし、テストステロンの抑制効果によって、成人病にはかかりにくいと推測される。
一方女性の場合には、テストステロンは存在しないわけではないが、男性と比べるとその量は桁外れに少ない。したがって、男性の場合と異なり、女性の睡眠障害にテストステロンが影響している可能性は少ない。女性の睡眠障害の原因はまだよくわかってないのだ。
女性が何らかの原因で睡眠障害に陥った場合、テストステロンによる成人病の抑制効果は期待できないから、男性と比べて成人病に陥る確率も高いのではないか、そう博士は考えている。
いずれにしても、ここまでわかってきたからには、女性は睡眠に十分気を使ったほうがよい。その影響は便秘などより深刻なのだ。
健康志向が高まっている今日、男女を問わず、健全な食事と適度の運動が、クォリティライフの合言葉となっている。だが女性の場合にはこれに、快適な睡眠を付け加えなければなるまい。
いまさらいうまでもなく、快い睡眠は美容と健康の切り札なのだ。
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