詩経国風:鄭風篇から「溱洧」を読む。(壺齋散人注)
溱與洧 溱と洧と
方渙渙兮 方(まさ)に渙渙たり
士與女 士と女と
方秉蕑兮 方に蕑を秉(と)る
女曰觀乎 女曰く觀しやと
士曰既且 士曰く既に且(い)きしと
且往觀乎 且つ往きて觀んか
洧之外 洧の外に
洵訏且樂 洵(まこと)に訏(おほ)いにして且つ樂し
維士與女 維(こ)れ士と女と
伊其相謔 伊(こ)れ其れ相ひ謔むれ
贈之以勺藥 之に贈るに勺藥を以てす
溱與洧 溱と洧と
瀏其清矣 瀏として其れ清し
士與女 士と女と
殷其盈矣 殷として其れ盈(み)つ
女曰觀乎 女曰く觀しやと
士曰既且 士曰く既に且きしと
且往觀乎 且つ往きて觀んか
洧之外 洧の外に
洵訏且樂 洵に訏いにして且つ樂し
維士與女 維れ士と女と
伊其將謔 伊れ其れ將に謔れ
贈之以勺藥 之に贈るに勺藥を以てす
溱水と洧水は、春を迎えて水かさを増し盛んに流れています、男と女が集まってきて、水草を取っています、女がいいます「あのすばらしい景色を見ましたか」、男が答えて言います、「ああ、行ってきたとも」
女は重ねていいます、「一緒に洧水のほとりに行ってみましょう、そこは広々としてすばらしいですよ」、男と女は、このように戯れあい、互いに芍薬の花を贈りあうのです
溱水と洧水は、春を迎えて水深増し清らかに流れています、男と女が集まってきて、水辺にいっぱいになります、女がいいます「あのすばらしい景色を見ましたか」、男が答えて言います、「ああ、行ってきたとも」
女は重ねていいます、「一緒に洧水のほとりに行ってみましょう、そこは広々としてすばらしいですよ」、男と女は、このように戯れあい、互いに芍薬の花を贈りあうのです
春の川辺で行なわれる歌垣の様子を詠んだものだとされる。日本の歌垣は筑波山をはじめ山の上で行なわれるのが多かったが、中国ではこの歌にあるように、河で行なわれるものが多かったようである。
コメントする