詩経国風:齊風篇から「雞鳴」を読む。
雞既鳴矣 雞既に鳴きぬ
朝既盈矣 朝既に盈ちたり
匪雞則鳴 雞の則ち鳴くに匪ず
蒼蠅之聲 蒼蠅の聲なり
東方明矣 東方明けぬ
朝既昌矣 朝既に昌(さかん)なり
匪東方則明 東方の則に明くるに匪ず
月出之光 月出づるの光なり
蟲飛薨薨 蟲飛んで薨薨たり
甘與子同夢 甘(たの)しんで子と夢を同じうせん
會且歸矣 會(かなら)ず且(しばら)く歸れ
無庶予子憎 庶くは予が子の憎むところと無からんことを
鶏が鳴いたわ、朝になったのね、いや鶏が鳴いたのではない、ハエの飛ぶ音さ
東の空が明るんだわ、もう朝になったのね、いや東の空が明るんだのではない、残月の光が輝いているのさ
虫がぶんぶんと鳴っているわ、このままあなたと一緒に寝ていたい、でもしばらくの間帰っていてください、こういったからといって、わたしを恨まないでくださいね
一夜をともに明かした男女が朝を迎えて、別れがたい様子を歌ったものである。しかし最後には別れなければならない、詩ではそれを女の口から言わせている。日本の妻問いと同じように、古代中国でも男が女のもとに通ったようである。
コメントする