シェイクスピアのソネット76 Why is my verse so barren of new pride(壺齋散人訳)
何故こうも私の詩には新鮮味がなく
多様さにも変化にも欠けているのか
何故時には趣向をかえて
新たな詩法や変わった言い回しを用いないのか
何故私はあいも変わらず同じ主題を
同じような調子で書き続けるのか
これでは一目で私の詩だとお里が知れ
内容は読まずしてわかろうというもの
愛する人よ 私が書いているのは君のことだけなのだ
君への愛が常に私の関心事なのだ
だから古い言葉に新しい衣装を着せ
既に書いたことをまた書くこととなるのだ
太陽が日々に新しくまた古いように
私の愛も繰り返し同じことを語り続けるのだ
この詩から86番目の詩までは同じような主題を歌っている。自分の詩がいつも代わり映えせず同じことを歌うのは、同じひとりの人をテーマにしているからだ。それに自分はもう若くもなく、新しいことをうたうだけの気力もなくなった。そういうシェイクスピアの気持ちが現われ出ている。
38番の詩は、自分の詩が面白いとすれば、それは歌われている相手の美しさのためだと歌っていた。その点でこの詩に通ずるものがあると、古来指摘されてきた。数字上もなにかの符合を感じさせる。(76は38の倍数)
SONNET 76 –William Shakespeare
Why is my verse so barren of new pride,
So far from variation or quick change?
Why with the time do I not glance aside
To new-found methods and to compounds strange?
Why write I still all one, ever the same,
And keep invention in a noted weed,
That every word doth almost tell my name,
Showing their birth and where they did proceed?
O, know, sweet love, I always write of you,
And you and love are still my argument;
So all my best is dressing old words new,
Spending again what is already spent:
For as the sun is daily new and old,
So is my love still telling what is told.
so barren of new pride:barrenは不毛、欠けていること、prideは新しいアイデアや考えを暗示する、noted weed:古びた衣装、still my argument:常に自分の詩の主題となるもの
コメントする