シェイクスピアのソネット101 O truant Muse, what shall be thy amends(壺齋散人訳)
美に染められた真理を無視し続けたことについて
怠惰なミューズよ お前はどう釈明するのだ
真理も美も 私が愛する人に依存する
お前とて同じこと 彼あってこそ威厳がつくのだ
答えよミューズ お前はこういうのではないか?
「真理が彼の色に染まっておれば 絵の具はいらない
美もまたわざわざ説明するための筆を必要としない
最上のものは何も加えないでも最上なのだ」と
彼が無欲だからといってだんまりを決め込むのか?
沈黙でごまかさないでくれ お前には力があるのだから
彼が金ぴかの墓に入ってもなお生き続け
将来にわたって称賛されるようにしてくれ
お前の仕事を果たせ ミューズよ やり方は私が教える
彼がいまあるとおりの美しさをずっと保てるようにしてくれ
この詩の中で、詩人がミューズに呼びかけていることの意味は二重のものだ。ひとつには青年の美しさをミューズ自身がたたえて欲しいということ、もうひとつは詩人自身にその美しさを表現する技量を、ミューズに求めていることだ。
だが詩人はミューズがあまりに無関心なので、ついに痺れを切らしてしまう。そして逆に自分が美のたたえ方をミューズに教えてやると言い出すのである。
SONNET 101 –William Shakespeare
O truant Muse, what shall be thy amends
For thy neglect of truth in beauty dyed?
Both truth and beauty on my love depends;
So dost thou too, and therein dignified.
Make answer, Muse: wilt thou not haply say
'Truth needs no colour, with his colour fix'd;
Beauty no pencil, beauty's truth to lay;
But best is best, if never intermix'd?'
Because he needs no praise, wilt thou be dumb?
Excuse not silence so; for't lies in thee
To make him much outlive a gilded tomb,
And to be praised of ages yet to be.
Then do thy office, Muse; I teach thee how
To make him seem long hence as he shows now.
neglect of:無視すること、for't:for it、outlive:生きながらえる、of ages yet to be:未来にわたって、do thy office:役割を果たす、hence as he shows now:これからも今と同じように
関連リンク: 英詩のリズム>シェイクスピア>シェイクスピアのソネット
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