李白の七言絶句「峨眉山月歌」(壺齋散人注)
峨眉山月半輪秋 峨眉山月半輪の秋
影入平羌江水流 影は平羌の江水に入りて流る
夜發清溪向三峽 夜清溪を發して三峽に向ふ
思君不見下渝州 君を思へども見えず渝州に下る
峨眉山に上弦の片割れ月がかかる秋、月影は私を乗せた船ともども平羌の江水に従って流れていく、夜清溪をたって三峽に向かういま、君のことを振り返っても見えず、このまま渝州へと下っていくのだ
李白は25歳のとき蜀を出て船で長江を下り、放浪の旅を始めた。この詩はその旅立ちを歌ったものとされる。
峨眉山は四川省の山で月見の名所、平羌は長江の支流民江のそのまた支流であり峨眉山のふもとを流れる。清溪は民江沿岸の宿場の名、三峽は蜀と楚の間にある渓谷、渝州は今の重慶のこと。短い詩に五つもの地名を盛り込んでいるのは、旅立ちの雰囲気を盛り上げるためであろう。
詩にある君とは、月のことをさすという見方もあり、峨眉山の月から連想して月のような眉の女をさすという見方もある。
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