ジョン・ダンの「聖なるソネット17(天国への思い)」(壺齋散人訳)
我が愛する女性が この世への負債を支払い
彼女自身と 私の幸福のために死んで
その魂が天に召されてからというもの
私はすっかり 天国へと思いをいたした
ここに彼女をたたえるあまりに 神よ
私はあなたを追い求めて 水源をたどった
でもあなたを見出し あなたに渇きを癒されても
あなたの癒しは 水腫となって私をとろかすのみ
なぜこれ以上の愛を 求める必要があるのか
あなたが彼女に代わって 私の魂に求愛しているのに
そして私が 聖者や天使や聖なるものに
心を奪われはしないかと 恐れるだけでなく
世界や肉体、いや悪魔までが私をとりこにしまいかと
あなたが妬ましそうに心配しているというのに
この詩は妻アンの死を悼んで作ったとされる。そのアンが天国へ行ってしまったので、ダンは天国のことばかり考えるのだが、それは天国にいる妻のことであって、天国の主催者たる神のことではない。
HOLY SONNETS 17.
Since she whom I loved hath paid her last debt
To Nature, and to hers, and my good is dead,
And her soul early into heaven ravishèd,
Wholly on heavenly things my mind is set.
Here the admiring her my mind did whet
To seek thee, God; so streams do show the head;
But though I have found thee, and thou my thirst hast fed,
A holy thirsty dropsy melts me yet.
But why should I beg more love, whenas thou
Dost woo my soul, for hers offering all thine:
And dost not only fear lest I allow
My love to saints and angels, things divine,
But in thy tender jealousy dost doubt
Lest the world, flesh, yea, devil put thee out.
関連リンク: 英詩のリズム>ジョン・ダン John Donne
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