先日アメリカで8人の子どもを出産した女性が世界中の話題になった。この女性にはすでに6人の子どもがあり、新しく生まれてきた子どもを加えると、実に14人もの子どもたちの母親になるというのだ。
八ツ子というのは自然の出産では普通起こらない。日本では、六ツ子は漫画の世界でのこと、五つ子あたりが限度で、しかも人口妊娠によるものである。
生んだ子どもの数が異常なので、女性は好奇の目の対象になった。プライバシーを探られて、年齢は30歳くらいであること、そして一度も結婚したことがないことなどをテレビのショー番組で報道された。また、この女性は男が嫌いで結婚はしたくないが、子どもが大好きなので、今まで試験管ベビーを何度か人工受胎し、6人の子を生んできたことなども紹介された。
今回の子どもたちも無論、試験管ベビーである。不妊医療の現場では、人工授精させた卵子を母親の胎内に移植する際、出産の確立を高めるために複数の受精卵を入れる。そしてある程度成長したところを見計らい、一つあるいは少数を残して他は堕胎させることもあるという。
今回のケースでも、医師たちは七つの受精卵が成長したことを確認した段階で、いくつかを堕胎する選択肢を母親に示した。しかし母親は全員を生みたいといったそうだ。生んでみたら子どもの数は8人だったわけだ。
そこで、なぜこんなにも多くの受精卵を母親の胎内に移植させたのか、そういう疑問が医師に向けられた。いくらなんでも多すぎるのではないかというわけだ。
筆者などは不妊医療のことはあまりよくわからぬが、それにしてもこんなにも多くの受精卵を移植するというのは、いくら出産の確立を高めるためとはいえ、やりすぎなのではないかという感じもする。そのことによって、母親にも子どもたちにも危険が及ぶ確立が高くなるだろう。
また母親が結婚していないことに関連して、人工授精そのもののあり方についての議論も巻き起こった。人工授精とはそもそも、不妊に悩むカップルを救うために始まったものだ。それを結婚していない女性にまで適用するのはどうしたものか、というわけである。
今回は、この女性がすでに6人も子どもを持ちながら、さらに人工授精を望んだことに対して、複雑な議論が沸き起こっている。批判の矢面に立たされた医師たちは、自分らは医者であって牧師ではないのだから、人工授精の是非や限界などは、宗教家や法律家に議論してもらいたいといっているそうだ。
ともあれ、生まれてきた子どもたちと母親の健康状態は、いまのところ重大な支障はないらしい。もっとも子どもたちはみな、ネズミのように小さいに違いない。
関連リンク: 人間の科学
コメントする