李白の五言律詩「宮中行樂詞八首其二」(壺齋散人注)
柳色黄金嫩 柳色 黄金にして嫩(やはら)かに
梨花白雪香 梨花 白雪にして香し
玉樓巣翡翠 玉樓 翡翠巣くひ
金殿鎖鴛鴦 金殿 鴛鴦を鎖す
選妓隨雕輦 妓を選びて雕輦に隨はしめ
徴歌出洞房 歌を徴(め)して洞房を出でしむ
宮中誰第一 宮中誰か第一なる
飛燕在昭陽 飛燕は昭陽に在り
柳は黄金色に輝き枝もたわわ、梨の花は白雪のように舞って芳しい匂いをふりまく、玉樓には翡翠(かわせみ)が巣くい、金殿には鴛鴦(おしどり)が飼われている
美女を選んで雕輦にお供をさせ、洞房を出入りさせて歌を歌わせる、この宮中にあって誰が一番美しいだろうか、あの趙飛燕を思わせるお方が昭陽殿におられるのだ
玄宗皇帝に召された李白を待っていたのは、望んでいた官僚としての待遇ではなく、翰林供奉という職柄、これは皇帝に侍従して憂さ晴らしの種を提供するのが主な役目で、いわば座付き役者のようなもの、李白は内心不本意であったろうが、それでもけなげに勤めた
そんな李白を玄宗は度々の園遊に同行させ、詩歌を作らせた。この歌は、玄宗が御苑を遊覧中に詔を発して李白に作らせたもの、記念のつもりだったのだろう。李白はそのとき、玄宗の兄寧王の屋敷で酒を飲んで酔っていたにかかわらず、早速10首を創作して献上したという。
この詩の中で李白は楊貴妃を趙飛燕に喩えた。飛燕は漢の成帝の妃で絶世の美貌を誇ったが、国を誤らせたとの評価もある。このことを捕らえて、日ごろ李白を憎んでいた高力士は、李白を誹謗中傷する材料にした。
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