先のクライスラーの破産に続いて、GMの破産も確定的になってきた。政府が定めた期限以内に、債権者との間で債権の整理交渉が成功させられなかったからだ。これでGMは、政府のほぼ全面的な管理下で、連邦破産法にもとづく再建手続きに入る見通しだ。
GMの株価は、先週末の段階で75セントまで下がった。政府の所有に移ればほとんどゼロになる。ところがGMの株を所有するヘッジファンドたちは、最後まで自分たちの持分にこだわって、リーズナブルな債権整理に協力しようとしなかった。その自分勝手さがGMを破綻に追い詰めたと同時に、自分たちの債権の価値をもだいなしにしたわけだ。
一方全米自動車労組のほうは、クライスラーのときと同じように、大胆な譲歩をした。賃金の大幅なカットとともに、手厚い医療保険へのGM側の拠出責任を免除してやった。全米自動車労組は、再建後のGMにとっては、政府と並んで最大の出資者となる見込みだ。
今回予定されている再建で、政府がつぎ込む金は500億ドルに上る。すでに200億ドルをつぎ込んでいるから、民間の非金融系企業の救済としては、異例の規模だ。政府がここまで肩入れするのは、アメリカの経済にとって、自動車産業がいかに重要な役割を果たしているかを示しているものだ。
GMの再建の柱は、経営のスリム化だ。14の製造ラインを停止するほか、自動車生産そのものも、大型車から小型車へのシフトを計画している。それによって、小型車中心になっている世界の自動車産業の流れの中で、競争力を高めようとする狙いだ。
GMはとにかく巨大企業だ。一時期は世界最大の企業であった。それがつまづくのであるから、アメリカはもとより世界経済への影響も大きい。日本でも、トヨタやスズキがさまざまな面で提携関係を持ち、またGMに部品を供給しているメーカーも多い。これらの企業はしかし、GMの破綻を見越して、これまでに色々な手を打ってきたといわれており、影響は最小限にとどめられそうだ。しかし市場が縮小していくのは避けられない。
いまや未曾有の経済不況の中で、自動車産業全体が不況風に吹きまくられている。トヨタでさえ巨額の赤字を出しているくらいだから、経営基盤に問題のあるところは、いつつぶれてもおかしくない状況だ。
だがクライスラーといい、GMといい、アメリカを象徴するような企業が次々と倒れていくのは、ある意味で壮観だ。
かつてアメリカの電気産業が、日本の追撃を受けて家電分野から撤退したことがあった。市場の変化と激しい競争がその背後に働いていたが、今回の事態もアメリカの自動車産業が世界の流れから落ちこぼれることを意味するのか。
また自動車産業に見られるような事態が、別の産業分野でも生じるのか、今後の動向から目を離せない。
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