南仏の海岸では、近年目立った変化が現れているそうだ。かつてはビキニのブラジャー部分を捨て去って、トップレスの裸体に近い女性が海岸を埋め尽くしていたものだが、今ではそうした女性は少数派になり、普通の水着かせいぜいビキニ姿の女性ばかりが目立つようになってきたというのだ。
フランス人の女性は、アメリカ人などと比べて、ヌードやセックスに関して大胆だといわれてきた。ビキニの水着がいち早く普及したのもフランスだし、そこからブラジャーを外してモノキニという半裸スタイルにとびついたのも、フランスの女性たちが最初だ。半裸どころか全裸で海岸を闊歩する女性も珍しくなかった。
ところが最近は、若い女性がモノキニや全裸で海岸を歩いている姿は滅多に見られない。社会学者のジャン・クロード・カウフマン氏は、これをモノキニからツーピースへの回帰だと表現し、直射光線が皮膚がんを引き起こすという噂が広がっていることが影響しているとしている。
氏はまた、フランス人女性のヌードに関する意識変化も大いに働いているのではないかと推測している。最近の若い女性には、彼女たちの母親や祖母の世代に比べて、ヌードに対して恥じらいを感じる人が増えているというのだ。
これを裏付けるような統計がある。Ifopのまとめた「女性と裸」 Femmes et Nuditéという統計だ。それによれば、いまだに90パーセントの女性は配偶者や恋人の前で平気で裸になるが、子供たちの前では60パーセントの女性が裸になることを避ける。また63パーセントの女性は、他の女性の目の前で裸になるのをためらい、22パーセントの女性は、下着だけの女性は裸同然だと感じている。
ほぼ半数の女性は海水浴場で全裸の女性を見るといやな感じがすると答え、むき出しになった胸や臀部をグロテスクと感じる女性は37パーセントいた。裸でいるより裸を隠している女性のほうが好ましいと応えた女性は45パーセントだった。
こうした傾向は、若い女性のほうが強い。18歳から24歳までの若い女性の25パーセントは、自分は人前で裸になるのは嫌いだと答え、20パーセントは裸になることそのものをひどくぶしつけな行為だと答えた。
この事態を捉えて、フランス人女性の意識の変化を論ずる見方も生まれている。フランス人女性がヌードに否定的に傾いているのは、保守化の表れなのではないかとする見方である。
フランス人女性がもっともおおらかだったのは、1970年代から80年代にかけてである。もともとヌードやセックスに鷹揚であった彼女らは、この時代になると、それが当たり前であるかのように、ますますおおらかになった。それからわずか一世代しかたっていないのに、フランスの若い女性はアメリカ人並みに貞節になってきつつある。
現在のフランスでは、浜辺で裸体をさらしている女性は、ほとんどが年を召した淑女方だと思っていい、若い女性が人前で肌をさらすことは、男たちにとってはまだ女の美徳の一部だと受け取られているが、同性からは軽蔑の目で見られるようになった。どうもそういうことらしい。
(参考)In France, a New Generation of Women Says Non to Nude Sunbathing By Bruce Crumley NYT
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