韓国の赤十字が北朝鮮の赤十字の要請に応える形で人道援助に踏み切ると発表した。援助の中身はとうもろこし1万トン、粉ミルク20トンなどだ。政府間の公式援助ではないが、調達には政府資金が当てられる予定で、実質的な政府援助といえる。これまで北に対して厳しい姿勢を示していた李明博政権のもとでは初めてのことだ。
北朝鮮は慢性的な食料不足に悩んでおり、今年も不作が続いて、食糧事情はさらに深刻化する見通しだという。その一方で、核開発やミサイル発射などを通じて国際的な孤立を深めており、十分な食料を輸入できないでいる。このままでは国民の多くが餓死する可能性さえある。今回の人道援助はそうした事態を踏まえたものだ。
これに対して韓国内では複雑な反応が広がっているようだ。人道援助自体に表立って反対する論調は少ないようだが、中身や経緯をめぐっての批判はあると聞く。韓国内のブログをチェックしてみても、そんな批判が随所から聞こえてくる。
まず何故とうもろこしなのか。韓国は日本と同じく米の余剰が問題となり、その対策に巨額の資金を投入している。だから余った米を与えればよいではないかという意見など、民衆の最も素朴な気持ちを反映したものだろう。政府側は、米を渡すと軍に回される可能性が高く、末端の人民まで行き届かない恐れがあると説明しているようだが、とうもろこしなら末端まで届くという保証もないのではないか。援助するからには、つまらぬ細工などしないほうが潔い
たしかにこれまでに何回も、北朝鮮は人道支援と称して膨大な米を受け入れながら、その配給の実態については公表してこなかった。だから援助者にそれが堂使われたか、わからない部分も多かった。大部分が軍隊や支配層に回ったのではないかとの憶測もなされている。もしそうなら、援助物資がきちんと末端の人民に届くように、北朝鮮に約束させるのが筋だろう。
援助の決定に到った経緯についても、いつものように北朝鮮のマヌーバーに振り回されたのではないかとの見方が流れている。南北の赤十字の間では離散家族の面会が話し合われていたが、北側は面会の機会拡大の条件として食料の人道援助を求めたというのだ。
韓国政府としては、人道援助を、北を6カ国協議へ復帰させるための切札として使いたい思惑もあるようだ。人道援助といいながら、南北双方とも、政治的な思惑が先行しているように見える。
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