上の写真(AFP提供)は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した火星の表面。こうした映像を元に、火星のより詳細な地図が作られつつある。その過程で、火星にもかつて海が存在したという仮説が、現実味を帯びてきた。
地図作成グループのリーダー、ウェイ・ルオ教授によれば、火星の赤道にそって深い谷のネットワークが形成されている。この谷がどのようにして形成されたかについて、従来さまざまな憶測がなされてきたが、教授は雨によって地表が浸潤されてできたと考える。
というのも火星の谷のネットワークが地球のそれと非常によく似ていることが明らかになってきたからだ。地球の谷は雨や氷河など、水によって浸潤された結果できたものだから、地球と同じような谷が火星にもあるとすれば、それもやはり水に浸潤されてできたと考えられるからである。
巨大な谷のネットワークを作り出すには、膨大な量の雨水が必要だ。いったい火星のどこにそんな水があったのだろうか。ルオ教授は、北半球に海があったと推測している。
火星の北半球は南半球より低い。だから火星に大量の水があったとしたら、それは北半球に集まって海を形成した可能性が高い。一方谷のネットワークは、赤道に沿った地帯がもっとも密度が高くかつ深く、南へ遠ざかるほど密度が低くかつ浅くなる。
これは降水が赤道付近でもっとも多く、そこから遠ざかるに連れて少なくなっていたことを物語っている。北半球に海が存在したと考えれば、降水のパターンも赤道付近で多く、そこから遠ざかるにつれ少なくなるはずだから、教授の推測には十分な根拠があるといえる。
火星にもかつて海が存在したと仮定しても、それが何時ごろ、どのような事情で消滅したかまでは、いまのところ見当がつかない。
ところでこの写真を見ると、月の表面と非常に異なっていることに気づく。月の表面には大小おびただしい数のクレーターが存在するが、火星の表面は非常に滑らかな部分が多い。これは何を意味しているのだろうか。
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