杜甫の七言律詩「堂成る」(壺齋散人注)
背郭堂成蔭白茅 背郭堂成り白茅に蔭はる
綠江路熟俯青郊 綠江路熟して青郊に俯す
榿林礙日吟風葉 榿林日を礙(さへぎ)る風に吟ずるの葉
籠竹和煙滴露梢 籠竹煙に和す露を滴すの梢
暫止飛烏將數子 暫く止る飛烏 滴數子を滴(ひき)ひ
頻來語燕定新巢 頻りに來る語燕 新巢を定む
旁人錯比揚雄宅 旁人錯って比す 揚雄が宅
懶惰無心作解嘲 懶惰にして解嘲を作るに心無し
城郭を背にして堂が完成し白い茅に覆われている、川沿いの道は歩きなれて青い野原を見下ろすことができる、榿林は日を遮ってその葉が風にうなり、籠竹は煙にかすんで枝からしずくを垂らす
鳥が子を連れて飛んできてはしばらくとどまり、燕がおしゃべりしながらやってきて新しい巣を作る、隣の人がこの光景を見て拙宅を揚雄の宅に比較した、自分は揚雄と異なって懶惰だから解嘲のような文を作ることはできぬ
前詩「卜居」に続いて草堂のなったさまを歌ったもの。「白茅に蔭はる」とあるから茅葺のそまつな建物だったのだろう。だが旅に倦んだ杜甫の一家にとっては、心身を休めることのできる、安住の家であったに違いない。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
コメントする