杜甫の五言律詩「客有り」(壺齋散人注)
患氣經時久 氣を患ひて時を經ること久しく
臨江卜宅新 江に臨んで宅を卜すること新し
喧卑方避俗 喧卑 方に俗を避け
疏快頗宜人 疏快 頗る人に宜し
有客過茅宇 客有りて茅宇を過ぐ
呼兒正葛巾 兒を呼びて葛巾を正す
自鋤稀菜甲 自ら鋤けば菜甲稀なり
小摘為情親 小しく摘むは情親の為なり
病気になってすでに久しいが、川沿いに新居を立てたのはつい最近のこと、わずらわしい世間を避け、のんびりと暮らせるのは気持ちよい
客が我が家を訪ねてきた、子どもを呼んで身づくろいをする、もてなしに畑に出ても収穫は乏しい、それでも乏しい野菜を摘むのは君の友情に報いるためだ
成都での数年間は杜甫の生涯の中でももっとも落ち着いた時期であった。そのことは前稿でも書いたとおりだが、杜甫はその悠然たる生活の境地を伸びやかに歌った詩を多く残している。この詩もそんなもののひとつ。時たま自分を訪ねてくれる隣人を思いやっている。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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