杜甫の七言律詩「客至る」(壺齋散人注)
舍南舍北皆春水 舍南舍北皆春水
但見群鷗日日來 但見る群鷗の日日に來るを
花徑不曾緣客掃 花徑曾て客に緣って掃はず
篷門今始為君開 篷門今始めて君が為に開く
盤飧市遠無兼味 盤飧市遠くして兼味無く
樽酒家貧只舊醅 樽酒家貧しくして只舊醅あるのみ
肯與鄰翁相對飲 肯へて鄰翁と相對して飲まんや
隔籬呼取盡餘杯 籬を隔てて呼取して餘杯を盡くさしむ
我が家は南北が川に囲まれている、いづこも春の盛りだ、見えるものといえば日々来る鴎の姿、花の散った道は客が来るからといって掃くことはしない、この蓬の門を開くのは君のためだ
市場が遠いので食事も粗末なものしかない、家が貧しいので酒は古いものしかない、別にかしこまって隣の翁と対酌するまでもない、垣根越しに声をかけてその場で飲みあえばいいのだ
客至るというから、わざわざ遠くから来た客を迎えたかといえばそうではない、隣翁と垣根越しに杯をかわしたことを歌ったものだ。草堂でののんびりした生活を、その長閑なさまに焦点をあてて詠んだのだろう。陶淵明の世界に通じるところがある。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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