杜甫の七言律詩「惜しむべし」(壺齋散人)
花飛有底急 花の飛ぶこと底(なん)の急か有る
老去願春遲 老い去っては春の遲きことを願ふ
可惜歡娛地 惜しむべし歡娛の地
都非少壯時 都て少壯の時に非ず
寬心應是酒 心を寛うするは應に是れ酒なるべし
遣興莫過詩 興を遣るは詩に過ぐるは莫し
此意陶潛解 此の意陶潛解す
吾生後汝期 吾が生汝が期に後れり
花の散るのは何と早いことよ、年を取った身には春がゆっくりと過ぎて欲しい、ただ惜しむらくは歓娯の地に遊ぼうにも、もう若くはないことだ
心をくつろがせるものは酒が第一、憂さ晴らしをするには詩に勝るものはない、陶淵明にはこのことがよく分っていた、同じ時代に生きることが出来なくて残念だ
陶淵明の生き方にあこがれた詩人は多い、杜甫もまたその一人だ、酒を愛し詩を作ることを通じて、陶淵明の達した境地に自分もあやかりたい、そんな風に思っていた。
この詩はそんな杜甫の気持ちが素直に現れた一篇だ。陶淵明と同じ時代にめぐり合えなかったことを悔やむところに、それがよく現れている。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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