マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモールの詩「わたしの部屋」Ma chambre(壺齋散人訳)
わたしの部屋は高いところにあって
窓が空に開いていて
青白い顔の
お月様がお客様
下で誰か呼び鈴を鳴らしてるけど
今日はもういいわ
あの人じゃないんだったら
だれにも会いたくないんだから
他のひとから身を隠して
ひとりで刺繍を編んでいるの
別に悲しいわけじゃないけど
心は涙でいっぱいなの
雲ひとつない青空を
ここから眺めてるの
星を見つめることもあるわ
嵐だって見ているわ
わたしに向き合って
椅子がひとつ誰かを待ってる
あのひとのだったのよ
二人で腰掛けたものだわ
リボンの飾りをつけたままで
まだそこにある
すっかりあきらめきったようにみえる
まるでわたしみたいに!
自分を捨てた男を未練たっぷりに回想するところは、マルスリーヌのもっともマルスリーヌらしいところだ。ボードレールもヴェルレーヌも、そんなマルスリーヌに女の可愛らしさを感じたのだろう。
Ma chambre Par Marceline Desbordes Valmore
Ma demeure est haute,
Donnant sur les cieux ;
La lune en est l'hôte,
Pâle et sérieux :
En bas que l'on sonne,
Qu'importe aujourd'hui
Ce n'est plus personne,
Quand ce n'est plus lui !
Aux autres cachée,
Je brode mes fleurs ;
Sans être fâchée,
Mon âme est en pleurs ;
Le ciel bleu sans voiles ,
Je le vois d'ici ;
Je vois les étoiles
Mais l'orage aussi !
Vis-à-vis la mienne
Une chaise attend :
Elle fut la sienne,
La nôtre un instant ;
D'un ruban signée,
Cette chaise est là,
Toute résignée,
Comme me voilà !
関連サイト:フランス文学と詩の世界 >マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール
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