杜甫の七言律詩「秋興其五」(壺齋散人注)
蓬萊宮闕對南山 蓬萊の宮闕南山に對す
承露金莖霄漢間 承露の金莖霄漢の間
西望瑤池降王母 西のかた瑤池を望めば王母降る
東來紫氣滿函關 東來の紫氣函關に滿つ
雲移雉尾開宮扇 雲移りて雉尾宮扇を開く
日繞龍鱗識聖顏 日は龍鱗を繞りて聖顏を識る
一臥滄江驚歲晚 一たび滄江に臥して歲の晩るるに驚く
幾回青瑣照朝班 幾回か青瑣朝班を照らせし
蓬萊の宮闕は終南山に対し、承露の金莖は天の川にまで聳えている、西の方瑤池を望めば、そこには西王母が降り立ち、東から吹いてくる芳しい風が函谷関を覆っている
雲が流れて雉尾の宮扇が左右に開き、太陽は龍鱗の周りをめぐって皇帝の顔を照らし出す、ここ滄江に臥している間に年が暮れてしまった、かつて朝廷で点呼を受けたことが何回あったろうか
長安の宮殿に仕えていたころを回顧したもの。滄江はキ州の辺りを流れる長江をさす。杜甫は今都から離れた辺鄙な場所で年月を過ごしながら、昔の栄光をなつかしんでいるのである。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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