杜甫の七言律詩「古跡を詠懷す五首其一」(壺齋散人注)
支離東北風塵際 支離たり東北風塵の際
漂泊西南天地間 漂泊す西南天地の間
三峽樓臺淹日月 三峽の樓臺日月淹(ひさ)しく
五溪衣服共雲山 五溪の衣服雲山を共にす
羯胡事主終無賴 羯胡主に事へて終に無賴
詞客哀時且未還 詞客時を哀しみて且つ未だ還らず
庾信平生最蕭瑟 庾信平生最も蕭瑟たり
暮年詩賦動江關 暮年詩賦江關を動かす
かつては東北に風塵がおこって家族別れ別れになり、いまは西南天地の間に漂泊している、ここ三峽の樓臺にとどまること久しく、五溪の衣服を着た蛮人と一緒に暮らしている
これも羯胡(安碌山)が天子に仕える振りをして謀反を起こしたせいだ、それで詩人の自分もいまだ故郷へ帰ることができないでいる、かの庾信も平生悲しい思いをし、晩年に望郷の詩を作って江南関中の人々を感動させたではないか
詠懷古跡五首はキ州周辺の古跡を詠懷した連作、秋興八首とならんで、キ州時代の杜甫の律詩を代表する作品群だ。
第一首は、庾信を借りて己の志を述べたもの。江關は江南、関中をさす。
関連サイト: 杜甫:漢詩の注釈と解説
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